act.2 穂高

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   唯と連絡が取れた、と言う店長の言葉に胸が高鳴る。頭がパンクしそうだ。 「11時くらいになっちゃいそうですけど」 「何時まででも待つ。朝まででも」 「それは困ります」  会えたら最初に『来てくれてありがとう』と伝えて。『無理を言って済まない』もだ。それから、それから、……………なんて言えばいいんだろう。いや、でも今日の目的は熊だ。いや、熊の人形を渡す事だ。気に入って貰えなかったら何が好きかを尋ねて。趣味も聞かなければ。  脳内フル回転でシミュレーションを試みるが、それより心臓の音が大き過ぎて考えが少しも纏まらない。一週間どころか、一時間足らずがこんなにも長く感じるなんて。 「お疲れ様でーす」  その声に振り返ると、唯がドアの前に立っていた。ゆったりした横縞のTシャツ姿が余りに爽やかで、脳内シナプスがてんでばらばらに飛び散って行く気がした。二度と繋がらない気がした。 「今出川さん……こんばんは」 「なんで丸一週間も不在なんだ!!」  ああ駄目だ。  今夜の俺もまた0点だ。いやもうマイナスだ。
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