act.3 俺、知ってるからな

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   人も車もたくさん行き交う往来で、なんで。  なんで俺は激しく運命を感じてるんだろう。  こんなの少女漫画でしか有り得ない。  王道ミュージカルでしか絵にならない。  大金持ちの紳士に見初められたパリの花売り娘が蝶よ花よと愛でられて、やがて紳士好みの貴婦人に育って行くあんなヤツだ。お誂え向きにこんなハイブランドが軒を連ねる素敵過ぎる街並み……!シャンゼリゼ通りですか……!行った事ないけど……! 「何色がいいのか聞いている!」 「要りませんっ!」 「じゃあ何で物欲しそうに見てた!」 「ふかわりょうに聞いて下さいっ!」  踵を返して逃げる。鯉川筋を横切る。平日なのに、何でこんなに人が居るんだ。何でこんなにパンを抱えた女の人が多いんだ。神戸の人、パン好き過ぎるだろ。パン好きにも程があるだろ───!! 「唯!」  腕を掴まれて引き戻されると肩が胸に当たった。173センチの俺より10センチ以上は高そうな、のっぽで逞しい体格に受け止められていた。 「信号くらい見ろ!」 「すすすすみませんっ!」 「話している最中に動き出すのは癖か!」
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