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短大に私が進んだ後、先に就職をしていた響は自宅を出て勤務先に近いところへ越していたから、滅多に顔を見れずにいた。
響が帰って来ている。会いたくてはやる気持ちを抑え込む。
ふわっとした肩までの髪。可愛らしく笑う瑠璃の横に正面をみつめた響。整った甘い顔立ちが優しい眼差しを見せている響のさらに横にいる私。
微笑む事ができずにただ立ち竦んでる。写真立ての中に過去を思い浮かべて唇を噛む。
「振られちゃったんだもの」
もう数年前にとっくに。この卒業式より少し前にきっぱりと。
響に逢いたい。想いは募るのに足は動かない。いつまでも未練がましくしてたら、きっと響を困らせる。
恋人を失くした…… そんな時に掛けてあげられる言葉も見つからない。
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