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あの時――
『結婚式を延期したいの』
『えっ、もう仲人だって頼んでるんだよ』
残業続きで疲れていた俺に代わり、彼女が慣れないハンドルを握る。
『理由は何、突然すぎるだろう』
『もっと向き合いたいの』
結婚を約束した千里からの言葉に、意味が理解できずに詰め寄る。
『ごめんなさい、響』
十字路に差し掛かっていた。彼女は一瞬、まぶたを閉じた。
『千里、危ない……っ! 前――っ!』
次の瞬間、激しい衝撃が二人を襲う。車はその場から引きずられていた。
横にいた彼女の名前を必死に叫び続ける――
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