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ベッドになだれ込み、ふと隣の家の灯りが目に飛び込む。いつも灯されない響の部屋が明るい。
慌てて身を起こしてそっと窓を開く。私と響の部屋の窓は向き合っていて、たった数メートルの距離しか離れていない。
窓に手を掛けて五センチ開く。響の窓は閉まっている。
溜息と共に十センチ。なんとなく見える人影にちょっとドキドキしたりして。
逢いたい。片側の窓を全開に開く。
「真珠、久しぶり」
頭上から懐かしい声が降ってくる。
「ひ、響……!」
いきなり開いた窓の向こうに響が立つ。柔そうな前髪が夜風に揺れて響が煙草を吹かす。
「おかえりなさい」
「ん、ただいま」
少し痩せたみたい。響は私の知らないところでどんどん大人の表情になっていく。
「どうした? 黙って」
貴方が微笑むからいけないの。月明かりが魅せる幻みたい。
「響に逢えた」
ぽろり言葉が零れ落ちた。
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