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「泣くことはないだろ」
だって。どれだけ久しぶりに響の顔が見れたのか。もうわからないくらい前だから。
「変わらないな、真珠」
「響は」
言いかけて止めてしまった。表情が少し疲れて見える。恋人を亡くしてまだ日は浅いはず。変わらないとも変わったとも言いづらい気がする。
「違うかな、綺麗になった」
え。思いがけない響の言葉に顔を上げる。
「なんだよ、そんなに目を丸くして」
くすっと笑う響の微笑みは昔のまま。
「響、いつまでこっちにいられるの?」
もう帰らないで。ずっとそこにいて。
「まだしばらくはいるよ。溜まっていた有給、出してきたから」
「そっか」
次の言葉が見つからない。淋しさを紛らわす為に戻って来たの? 問い掛けてしまいそうになって口を閉ざす。
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