1206人が本棚に入れています
本棚に追加
/238ページ
「真珠はまだ同じ仕事?」
「ん、相変わらず歩き回ってる」
事務職を経てから外勤営業に配置換え。それからはずっと営業職のまま。
「家を売るんじゃ大変だろ」
「楽では無いけどがんばっているのよ」
他愛もない会話が続くとほっとする。
「あ、下で呼ばれてるな」
部屋の奥を振り返って響が窓に手を掛ける。
「話せてよかったよ、またな」
「ん、私も。おやすみなさい、響」
すっと窓が閉められる。閉じたのを確認してから私も窓を閉める。
胸が高鳴り続けてドキドキしている。
「響……」
ほんとはね、もっとたくさん話したい事がある。
だけど―― 帰ってきた響に言えない事もたくさんある。
「どうして…… 今頃」
また涙が零れないように、上を見上げてぎゅっとまぶたを閉じた。
最初のコメントを投稿しよう!