It's now or never.               [今を逃したらチャンスはない]

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 響が戻って来ている事がわかっても、急に仕事を休んだりは出来ない。翌朝はいつも通りに出勤をし、午前中はアポ取りに内見の案内、午後は同僚と行動を共にする。  小木 恭哉(おぎ きょうや)―― 配置換えの後、私を指導してくれたのが彼だった。    人当たりの良い柔らかな印象と、理知的な整った顔に安心感を感じる。落ち着いた話し方と丁寧な接客がお客様からも評価が高い。    社用車を運転中、恭哉が尋ねてくる。 「真野さん、夜はどうしてる?」 「あ…… 今日は家に帰らないといけなくて」 響の顔が浮かぶ。約束をした訳じゃないのに早く帰りたいと思ってしまう。 「何かありましたっけ?」 今日は夜に回したアポは無かったはず。 「たまには付き合わないかと誘ったんだよ」 「誘っ…… 珍しい」 ごめんなさいと笑ったら、恭哉は浅く溜息をつく。
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