821人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
助手席に座る瑠璃は俺が渡したFAXに目を通して躊躇う表情をした。
「支払い不要って書いてあるわ」
「向こうの指示通りに動くんだ、気にしなくていいよ」
「美容院にエステ…… ブティックに……」
瑠璃のつぶやきを隣に聞きながら車を走らせる。
「ま、マッサージ?」
「あはは、そんなもんまで入ってるんだ」
如月琥珀、彼が本気で瑠璃をパートナーに仕立てようとしている。
瑠璃の手前格好つけて笑ったものの、妙に気持ちが落ち着かない。
最初の目的地である美容院に着き、高いビルの一階に入るテナントへ瑠璃を送り出す。
「予約が取れないで有名なお店よ」
つまり、今日は半日、こういうレベルの店を廻らされるのか。浅い溜息が出る。
「終わったら携帯に連絡をして」
品川弁護士からの指示は、瑠璃の送迎。店の中まで付き添うようには言われていない。
最初のコメントを投稿しよう!