ガラス越しの誘惑

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 助手席に座る瑠璃は俺が渡したFAXに目を通して躊躇う表情をした。 「支払い不要って書いてあるわ」 「向こうの指示通りに動くんだ、気にしなくていいよ」 「美容院にエステ…… ブティックに……」 瑠璃のつぶやきを隣に聞きながら車を走らせる。 「ま、マッサージ?」 「あはは、そんなもんまで入ってるんだ」  如月琥珀、彼が本気で瑠璃をパートナーに仕立てようとしている。  瑠璃の手前格好つけて笑ったものの、妙に気持ちが落ち着かない。  最初の目的地である美容院に着き、高いビルの一階に入るテナントへ瑠璃を送り出す。 「予約が取れないで有名なお店よ」 つまり、今日は半日、こういうレベルの店を廻らされるのか。浅い溜息が出る。 「終わったら携帯に連絡をして」 品川弁護士からの指示は、瑠璃の送迎。店の中まで付き添うようには言われていない。
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