824人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
【side_琥珀】
インルームディナーが始まる。目の前の可愛らしい人は、サーモンのロール仕立てが運ばれてくると、やけに緊張した表情を見せる。
「マナーはいい、どうせ二人きりだ」
「不慣れでごめんなさい」
まだ幼さが残る女性かと、最初に受けた瑠璃へのイメージは変わっていた。
旬の魚のポワレ、牛フィレ肉のグリル。一皿を前にする度に嬉しそうに笑う。朗らかで従順な笑顔を見せたと思うと、時折不意に黙り込み大人びた美しさを魅せる。
「当日の流れは頭に入れておいてくれ」
「……本当に、私で大丈夫ですか。琥珀さん、足も治ったみたいなのに」
「今からパートナーチェンジは考えていないよ」
初めて瑠璃を見たあの日、瑠璃に思いがけず惹きつけられた。『変わる』君はまだ、咲き誇る前の蕾みの様な女性だと興味を持つ。
最初のコメントを投稿しよう!