花散る夜に

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【side_琥珀】   インルームディナーが始まる。目の前の可愛らしい人は、サーモンのロール仕立てが運ばれてくると、やけに緊張した表情を見せる。 「マナーはいい、どうせ二人きりだ」 「不慣れでごめんなさい」 まだ幼さが残る女性かと、最初に受けた瑠璃へのイメージは変わっていた。  旬の魚のポワレ、牛フィレ肉のグリル。一皿を前にする度に嬉しそうに笑う。朗らかで従順な笑顔を見せたと思うと、時折不意に黙り込み大人びた美しさを魅せる。 「当日の流れは頭に入れておいてくれ」  「……本当に、私で大丈夫ですか。琥珀さん、足も治ったみたいなのに」 「今からパートナーチェンジは考えていないよ」  初めて瑠璃を見たあの日、瑠璃に思いがけず惹きつけられた。『変わる』君はまだ、咲き誇る前の蕾みの様な女性だと興味を持つ。
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