花散る夜に

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 やけに大人しく腕の中にいる。どうしたのかと思えば顔をショールで半分程覆っている。 「瑠璃、できたら顔を見せてくれないか」 思いっきり横に顔を振る。どうやら随分と厄介な女性に惹かれたらしい。 「今は何を思っている」 「えっ……」 わずかに振り返り瑠璃が俺を見上げる。 「こっちを向いてくれるといいんだが」 扱いに困る。何故か瑠璃を見ていると俺らしくない言葉が零れ出す。 「琥珀さん、う、腕がっ」 「また逃げ出す?」 遠慮をするのは止めだ。瑠璃を抱き寄せてショールを顔からはらう。 「顔を上げて」 耳元へささやく。瑠璃がどうするのか知りたい。    瑠璃は顔を上げずに俺の両腕をぎゅっと指で掴んだ。
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