花散る夜に

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【side_瑠璃】  耐え難い程の緊張と恥ずかしさに顔が上げられない。琥珀の視線は真っ直ぐすぎて、どうしたらいいのかわからなくなる。  琥珀を知りたかった。だからここまで来たのに。 「あんまりからかっちゃだめです」 抱きしめられたら勘違いをしてしまう。 「ん―― まだそう見える?」 落ち着いた低い声が耳元に響く。いつかの時とは違う、ゆったりとした甘い声がする。 「そろそろ解放してください」  これ以上抱きしめられていたら、心臓がパンクしちゃいそうで。 「二度も逃さないよ」 なおさら力が込められて琥珀の胸に引き寄せられる。 「琥珀さんこそ、何を考えているんですか」 どう見ても釣り合わない。大人の男性と子供っぽい私。からかわれているとしか思えない。さっきだって随分笑われていたし。
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