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「好きなの? 如月さんを本当に」
名前を聞くと恥ずかしくなる。小さく頷くと頭にポンッと一輝の手が乗っかって。
「わかった、そこは譲る」
「ゆ、譲るって」
「だけど、何かあったらすぐに言うんだよ。心配だよ、瑠璃は」
眼差しが真っ直ぐに向けられて、胸にちくちく傷みが走る。一輝が私の為に笑ってくれている。
「ありがとう。ごめんね、一輝」
「謝られたら困るよ。俺はずっと――」
一輝は言いかけて口をつぐんだ。
「明日は見に行くから。送るつもりだったけど、必要無い?」
「ん、家まで迎えの車が来るみたい」
そっか、一輝の表情はやっぱり寂し気に見えたけど、許してくれた事にちょっとほっとしていた。
また明日会場で。一輝と別れてショッピングモールを後にする。信号待ちをしていた辺りで携帯電話の振動に気が付く。
「はい、瑠璃です」
一輝と会う約束がある事は伝えておいた。電話は琥珀からだった。
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