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「え、大丈夫よ、歩くわ」
『車を向かわせたから、それでおいで』
甘くて低い琥珀の声が耳元に聞こえてくる。
『なんだ、何を笑っている』
「だって」
貴方があまりにも優しすぎて。最初の印象からかけ離れ過ぎて妙にくすぐったい。
早々に到着した迎えの車に乗って琥珀の自宅へ。二人きりにはまだ慣れないけれど、自宅にはメイドさんらしき女性もいたから緊張感が少し違う。
って―― 思っていたら。
「悪いが、手伝ってくれるか」
「あ、はい」
メイドさんらしき女性がいなくて。何故か二人で紅茶を淹れてるところ。
「きゃ……っ」
高い棚からカップを取り出そうして手が滑る。
「やだ、ごめんなさい」
床に幾つかに大きく割れたカップが散らばる。咄嗟に破片に手を伸ばしてしまった。
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