愛にふれて

3/17
824人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
「え、大丈夫よ、歩くわ」 『車を向かわせたから、それでおいで』 甘くて低い琥珀の声が耳元に聞こえてくる。 『なんだ、何を笑っている』 「だって」 貴方があまりにも優しすぎて。最初の印象からかけ離れ過ぎて妙にくすぐったい。  早々に到着した迎えの車に乗って琥珀の自宅へ。二人きりにはまだ慣れないけれど、自宅にはメイドさんらしき女性もいたから緊張感が少し違う。  って―― 思っていたら。 「悪いが、手伝ってくれるか」 「あ、はい」 メイドさんらしき女性がいなくて。何故か二人で紅茶を淹れてるところ。 「きゃ……っ」  高い棚からカップを取り出そうして手が滑る。 「やだ、ごめんなさい」 床に幾つかに大きく割れたカップが散らばる。咄嗟に破片に手を伸ばしてしまった。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!