愛にふれて

4/17
824人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
 ――ッ。指先に鈍い傷み。 「瑠璃、切っただろ」 まるで指先にキスをされているみたい。琥珀の唇がほんの少し傷付いたところへ口付けられる。 「だ、大丈夫ですっ」  この距離感、どうにかしてっ。琥珀といると心臓が本当に飛び出てしまいそう。 「どうした? 顔が赤いぞ」 頬をすっと伸びた琥珀の手の平が包む。余計に顔が熱くなるっっ。  琥珀と過ごす時間はゆったりとしていて。顔を見ている事にも少しずつ慣れてきたけれど。リビングのソファから動けなくなった。 「離したくないんだ、かまわないだろう」 背中にずっと琥珀の胸が合わさって、両腕が後ろから絡みついてくる。  甘々し過ぎて。恥ずかしくて私ばっかりジタバタしてるみたい。 「琥珀さん、明日の準備しなきゃ」 「瑠璃は何もしなくていい」 ぎゅっと抱きしめてくれる腕は優しいのに。  だけど―― それは時折顔を出す。  まだ貴方は冷たい瞳を魅せる時がある――
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!