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――ッ。指先に鈍い傷み。
「瑠璃、切っただろ」
まるで指先にキスをされているみたい。琥珀の唇がほんの少し傷付いたところへ口付けられる。
「だ、大丈夫ですっ」
この距離感、どうにかしてっ。琥珀といると心臓が本当に飛び出てしまいそう。
「どうした? 顔が赤いぞ」
頬をすっと伸びた琥珀の手の平が包む。余計に顔が熱くなるっっ。
琥珀と過ごす時間はゆったりとしていて。顔を見ている事にも少しずつ慣れてきたけれど。リビングのソファから動けなくなった。
「離したくないんだ、かまわないだろう」
背中にずっと琥珀の胸が合わさって、両腕が後ろから絡みついてくる。
甘々し過ぎて。恥ずかしくて私ばっかりジタバタしてるみたい。
「琥珀さん、明日の準備しなきゃ」
「瑠璃は何もしなくていい」
ぎゅっと抱きしめてくれる腕は優しいのに。
だけど―― それは時折顔を出す。
まだ貴方は冷たい瞳を魅せる時がある――
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