愛にふれて

5/17
824人が本棚に入れています
本棚に追加
/156ページ
 舞踏会当日。この日は朝からバタバタ。 「会場で着替えるんでしょう?」 「ドレス類は向こうに置いてあるの」 真珠に手伝われながら簡単なメイクアップ中。 「瑠璃、なんだか楽しそうね」 私の顔を覗き込み、淡い色の口紅を手に取る。 「一輝くんが心配だったわ、正直」 「え、姉さん、知っていたの?」 リップペンシルを動かしながら真珠が話してくる。 「見ていたらわかるわよ。一輝くんの気持ちくらい」  ……わかりませんでした。言われるまで。 「でも、瑠璃は如月さんを選んだのね」 え、選ぶなんてそんな。ただ素直に琥珀にYESと言っただけで。 「いいわよ、照れなくても」 はい、出来たわよ。真珠がにっこり笑って鏡の中に映る自分を確認する。 「ありがとう、姉さん」 「ナチュラルにしといたわ」 本番ではメイクタイムがある。悩んでいたら真珠が手を貸してくれていた。 「ねぇ、瑠璃」 なんだろう、真珠はこの前から少し塞ぎ気味に見える。
/156ページ

最初のコメントを投稿しよう!