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舞踏会当日。この日は朝からバタバタ。
「会場で着替えるんでしょう?」
「ドレス類は向こうに置いてあるの」
真珠に手伝われながら簡単なメイクアップ中。
「瑠璃、なんだか楽しそうね」
私の顔を覗き込み、淡い色の口紅を手に取る。
「一輝くんが心配だったわ、正直」
「え、姉さん、知っていたの?」
リップペンシルを動かしながら真珠が話してくる。
「見ていたらわかるわよ。一輝くんの気持ちくらい」
……わかりませんでした。言われるまで。
「でも、瑠璃は如月さんを選んだのね」
え、選ぶなんてそんな。ただ素直に琥珀にYESと言っただけで。
「いいわよ、照れなくても」
はい、出来たわよ。真珠がにっこり笑って鏡の中に映る自分を確認する。
「ありがとう、姉さん」
「ナチュラルにしといたわ」
本番ではメイクタイムがある。悩んでいたら真珠が手を貸してくれていた。
「ねぇ、瑠璃」
なんだろう、真珠はこの前から少し塞ぎ気味に見える。
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