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まだ瑠璃や琥珀の姿は見当たらない。俺は仕方なく、ウェイターからドリンクを受け取り壁際に寄った。
辺りを見渡すと、正面の突き当りになる位置にゆるりとした暗幕が見える。足元も一段高くなっていてそこが挨拶に使われる舞台になるだろうと推測された。
瑠璃はモデルを引き受けた。俺が起こした事故の為に。彼女が琥珀と付き合うと告げてきた時、俺は引き留める事ができなかった。
失う前に告白したんだけどな――
琥珀がどこまで本気なのか、見定めてやる。横から不意に瑠璃をかっさわられたんだ、それぐらいしなくては納得ができない。
「あら、貴方……」
真紅のドレス姿をした美しい女性が、前から歩いて来て俺の前で足を止めた。
「前にお会いしましたわ。覚えていらっしゃる?」
やわらかな微笑み。彼女は小泉朱音と名乗った。
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