愛にふれて

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 さっき、品川さんは俺になんて言った?  嫌な胸騒ぎに朱音の後を追う。にこやかな笑顔が舞台上の二人に向いている。  花束を差し出す朱音。落ち着いた様子でそれを受け取る琥珀。真横に並んで立つ瑠璃。  朱音に礼を述べて琥珀が頭を傾げる。何かをつぶやく朱音に耳を傾けようと顔が動く。 「すみません、通して下さい」 人が多過ぎる。朱音の元にあと一歩というところで会場内が湧き上がった。   「女神の口付けがされました……!」 流れるアナウンス。琥珀の頬に口付けをした朱音と琥珀の二人にスポットライトがあてられる。  どういうことだよ。苛立ちが湧いてくる。真紅のドレスを目の前に捉えた時、飛び込んで来たのは瑠璃の泣き出しそうな表情(かお)。 「瑠璃――!」  「一輝……」 琥珀の視線が俺に気付き目で追いかけてくる。かまうもんか、そんな事をしているあんたが悪い。 「早く来い、瑠璃」 手首を掴む。躊躇う瑠璃を俺はその場からさらった。
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