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「一輝、待って」
高いヒールが足元を危うくさせている。
「待たない」
会場を飛び出す真似をしても琥珀は追って来ない。それが余計に俺を苛々させる。
瑠璃を大切には思っていなかったのか。だったらなんの為に俺は――
「空いてるなら何処でもかまわない」
隣接するホテルのフロントへ。ルームキーを受け取る間、瑠璃は何度も後ろを振り返る。
「来ないんだろ? その程度なんだよ」
「でも、一輝……」
ぎゅっと唇を結ぶ。瑠璃だって内心わかっているんだ。琥珀が本気だった筈がないと。
「お部屋のご用意ができました」
ルームキーを手に瑠璃の元へ。とにかくドレスを着替えさせたら連れて帰ろう。
「瑠璃、行くよ」
離したくなかった。瑠璃が望むならと彼女から引いた。こんな事になるなら最初から――
違う。どこからだってやり直せる。もう一度ちゃんと伝えるんだ。
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