舞踏会の閉幕

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舞踏会の閉幕

【side_琥珀】  大勢の招待客が見ている中で一輝が瑠璃を連れ出す。険しい顔つきをしていた。明らかに俺に不満があるのだろう。 「川瀬、瑠璃の居場所はわかったのか」 「Candytuftの方で部屋を借りたようです」 隣接するホテルに滞在中。まだ間に合うか。 「間もなくラストの演目だ、瑠璃を連れて来てくれ」 川瀬に指示をすると、品川が曇った表情を見せる。 「なんだ、何か言いたげだな。玲司」  品川 玲司―― うちの顧問弁護士であり、唯一信頼がおける友人。 「御自分で行かれるべきです」 「招待客を放り出してか。立場があるだろう」 「新製品の説明なら、貴方の部下達で十分足りてますよ」  ガラス階段の周りには人だかりができている。商品を片手に担当チームが声を高く話している。 「おそらく受注にも至るかと。今なら貴方が多少抜けても問題はありません」
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