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「わかった、俺が行こう」
「瑠璃さんもその方が喜びますよ」
見透かしたような目で笑うな。俺は時々、玲司が苦手だ。
川瀬の案内で瑠璃が滞在中の部屋へと向かう。一輝と一緒にいることは承知している。まさかという思いが湧き上がってくる。
瑠璃にふれるな―― あれはまだ咲き誇る前の蕾だ。丁寧に愛さなければ容易く折れる。
「こちらの部屋ですね」
川瀬が先に立ち呼び出しを掛ける。開いた扉の向こうには怪訝そうに顔をしかめた一輝が立つ。
「着替えの服をお願いしたはずだけど」
「会はまだ終わっていない。瑠璃を迎えに来た」
自宅に招いた時の一輝は頼りなげに見えた。今、俺の前に立ち塞がる一輝は雰囲気が違う。
立派な騎士気取りか。そんなに睨みつけるな。
「悪いが君と睨み合っている暇はない。瑠璃を出してくれ」
そして確信をする。一輝は瑠璃を傷付ける真似はしない。俺がまだ、瑠璃を抱けない様に。
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