27人が本棚に入れています
本棚に追加
神様なんて、いないんじゃないかな。
ふとそう思う。
助手席から見える夜景は、私の心とは裏腹にきらきら輝いている。月は心做しか青白く、不気味に私を嘲笑う。木々が月を隠し、また現させ、また隠した。
ぼぅっとそれを眺めながら、溜息をついた私に『彼』は、「…どうしたの?」と問う。
私は微笑み、「…ううん、何も。ちょっと、帰りたくないなって思っただけ」と答える。
『彼』は「…そっか」とだけ言った。
車は山道を下る。いつもは不快でしかない石ででこぼこした道も、今日に限っては心地よく感じてしまう。ゆりかごでゆらゆら揺られて眠る赤子は、きっとこんな気持ちだろう。
最初のコメントを投稿しよう!