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「以前、俺とどこかで会ったか?」
「ええ、確かに」
「そうだな。
俺もお前を知っている。
が、そん時のお前は外資系製薬会社の警備課で研修中だったはずだ。
違うか?」
「その通りです」
「そのお前が何故ここにいる。
そして何故、お前の面倒見役として俺を指名させた?」
疑わし気に訊いた。
「最初の質問につきましては正に疑問です。
フェルディナントファーマ社での研修中、僕は大いに働き、その間コロコロと担当が替わっても文句一つ言いませんでした。
しかし一月経つか経たないかのうちに人事課担当の方が、
『君の面倒は誰も見きれない。
今後の研修は見送るっ』と、語気を強めて仰ったのです」
「、、、だろうな」
局長は深く頷き、そのまま目を閉じた。
「そしたらですね、その場にいらした柏木社長が、
『キセくんが本気で刑事になりたいのなら、みなつき刑事につくのがいいだろう』と、、、」
「てめぇ」
「はい?」
「それを世間ではコネってんだよ」
「いいえ、それは違います。
社長は僕に『刑事の素質はちゃんとある』とも仰って下さったのですから」
未だ二十歳そこそこにしか見えない木瀬春馬は、やや不満げに答え、
「、、、、」
黙して怒れる水無月の眼に、刑事局長は胸の前で両手を振った。
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