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「みなつき刑事! どこへ行くんですか?」
背後からパタパタと軽快な足音をたててついてくるキセに、
「飯だ」
返事しつつ、
─ コイツは今日より数ヶ月限りの荷物と
割り切るしかない。
適当に仕上げて、どこかの部署にでも
放り込めば終わりだ。
と、歩みの幅も速さも変えず奥歯を噛んだ。
─ その間、存分に予算を使ってやる。
「好き嫌いは却下する。アレルギーはあるか」
裏口から外に向かって歩きながら訊けば、
「好き嫌いは全くないです。
僕、最近流行りの昆虫食とかもイケますし」
「そんなことはどうでもいい」
「アレルギー、、、って言われても医学書に書かれてる事以外よくわからないのです。
そもそも生まれてからこのかた風邪一つひいた事ないものですから」
見た目に関しては育ちの良さそうな顔を艶々させ『健康優良児ラベル』を張り付けたようなガキは、ペラペラと捲し立てながら俺に並んだ。
「意外だな」
─ 、、、今どきの馬鹿はこんなもんか。
「そうですかぁ?」
呑気なあくびで伸ばした後のケロリとした横顔を見、軽く舌打ちしつつ足を速める。
「頭脳明晰ってだけのお前が、いきなり本庁勤務に引っ張られたのには何か理由があったはずだ。
本人ならわかるだろ。今俺に説明しろ」
「さあ、、、。
それが僕にも何が何だかさっぱり」
「まさかとは思うがお前、フェルディナントファーマ社の社長に過去可愛いがられてた男のうちの一人か?」
「『可愛いがられてた』とは?」
「デキてたか、ってことだよ」
「、、、ああ、なるほどですね、
『同性愛の仲』か?
という意味での質問でしたらば、それはありません」
「んならお前の父親は警視庁にいる幹部の一人か?」
「とんでもない」
「余程名のある政治家でも身内にいるのか?」
「僕ん家は代々親族一同が『魚屋』です」
「、、、、」
「あ、なので魚は捌けますが、それが理由だとはさすがに、、、あっははは、、、」
「、、、もういい」
─ 馬鹿馬鹿しい。
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