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警察関係者も出入りする近所の中華飯店から出たあと、キセは口周りの油を拭きながら一度歩みを止め、小さなげっぷを響かせた。
「しっかしあの店の餃子、親指サイズとはいえ一人前が50個とは凄い量ですねー、、、ケップ」
「にしても一人で二皿は食いすぎだろ」
「次はどちらへ?」
「港近くの花園街という中華街にいる情報屋と接触する」
「情報屋?」
「東南アジア某国を経由して南米から流れてくる覚醒剤のデカい取引情報が入ってきた。
まずはそいつから情報の出元を確かめ、裏を取る作業だ」
「なるほどですね、、、ケプ」
眉根を寄せ真剣な顔をしているが、どこまで理解しているかは疑わしい。
駐車場に戻って運転席のドアに手をかけ、ふとキセの立ち位置に違和感を覚え顔を上げると、満面の笑みで後部座席のドアの前に突っ立っていた。
「、、、何してる」
「ロック。開くのを待ってるんですが?」
「、、、、。」
数秒間の沈黙後、不思議そうに俺を見る。
「、、、、ケップ」
「お前が座るのは助手席だ」
「あ、、、。
ああ、すみません、ついクセで」
さらに助手席のドアが開けられるのを数秒待ち、
『っと、自分で開けるんでした』
と頷き、ようやく自らシートに乗り込んだ。
「クセとは、、、どういうことだ?」
これまでに経験したことのない妙な予感がする上、
「僕、通勤手段が車なもんですから」
「、、、、」
コイツの言っている意味がよくわからない。
「で、、、。
どうして乗り込む先が後部座席なんだ?
お前は毎朝誰かと相乗りでもして出勤してるのか?」
「いいえ、僕と専属の運転手だけですが?
、、、ケップ」
「ああ、そういうこ、、、」
アクセルから足を浮かせ、減速ついでに車を脇に寄せて止めた。
「どうしたんですか? みなつき刑事」
ハンドルに片肘を乗せた俺は、
不思議そうに顔を傾げるキセに向き合い、
「そうだな、、、。
お前はまず『ワケありな馬鹿』を抱える羽目になった俺に詫びろ。それから」
「誰ですか、そのワケありな馬鹿って」
「、、、、」
「、、、ケップ」
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