『キセ』くん ─1─ 噯気

6/6

174人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
どうやらコイツの背景には叩かずとも出てくる埃がありそうだ。 「まあいい。 俺はお前に興味もねぇし、放っといても追々(おいおい)わかるだろう」 再び車を出した。 「まずはお互いを知らないといけませんね。 これからの僕達に時間はたっぷりありますから。 、、、ケップ」 「四六時中お前を連れ回す気はない。 但し俺と組むなら、離れてる間も俺のルールには従え」 「みなつき刑事のルールより局長の命令に優先して従わなくっちゃいけません。 仕事はもとより、三食昼寝まで付き合うつもりです、僕は」 「互いの為に言っているんだ。 俺が行きつける店の食いモンすら、お前の胃には合わねぇだろ?  俺だって飯くらい一人で自由に食いたい」 「駄目です。 局長は『寝食を共に』って(おっしゃ)ったじゃないですか。 僕は日常の全てをあなたに捧げて立派な刑事になりたいんです」 「俺には死んでも言えねぇセリフだな」 「それに、すごーく美味かったですよ、あの店の餃子、、、ケプ」 「はん、さっきからゲップばっかしてるじゃねぇか」 「あ、これがゲップってヤツですかぁ。 初めての経験です! おかしいな、、、何故今までは出なかったんでしょう?」 「合わねぇ食いもん食ったお前の(やわ)な腹が悲鳴あげてんだろ」 皮肉たっぷりに窓を開ければ、キセも同じように窓を下げ、 「そうですかぁ?  でも僕はゲップする度に、 『この餃子、何度も美味いなぁ(・・・・・・・・)』 って、、、得した気分なんですが」 目を閉じて満足そうに笑った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

174人が本棚に入れています
本棚に追加