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……え?いま?さとみさん今櫂兄の家にいるの?
「ごめんな、言ってなくて。一緒にレポートやっててさ、追い返すのもかわいそうだったから…。まぁいても気にしないでくれ」
いやいやいやそれはむしろ僕が追い返される側じゃん!!!まだ行ってないけど!!完全に僕邪魔者じゃん!!!
「そっそうだったの!!?言ってくれれば行かなかったのに…!!ごめんね櫂兄…」
とたんにズン…と気分が沈む。こんなふうに恋人とゆっくりしている時間を中断されたら普通は嫌な気持ちになるよね。
知らなかったとはいえさとみさんにも櫂兄にも失礼なことをしてしまった…。
「言ってくれれば行かなかったって…航、そんなにさとみが嫌なのか…?大丈夫、良いやつだよあいつは。俺が保証する。」
櫂兄は僕の発言にちょっとびっくりしたようだった。
っていうか …え?いやそういう意味ではないんだけど…!
2人で微妙に噛み合わない会話をしているうちに櫂兄のお家へ到着した。
櫂兄のアパートは大学のすぐ近くにあるので住んでいるのは学生ばかりらしい。
でも都内の家賃の割には広く、綺麗ですごくいい物件だ、と櫂兄も言っていた。
この綺麗なアパートに遊びに来るときはいつも楽しい気分になっていたけど、今はなんだか緊張と申し訳なさとで胃が痛い…。
さっさとノートを見つけて帰ろう…って帰りも櫂兄に送ってもらわなきゃだった…またさとみさんを1人にして…最低だ僕……。
じくじくと玄関前で自己嫌悪に陥っていると、櫂兄が先に「ただいまー」と言ってずんずんと入っていったので慌てて僕もそれに続いた。
廊下突き当たりのドアをあけると8畳ほどの部屋が1部屋ある。
そこで見た光景は僕の想像と180度違っていた。
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