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「おかえり〜」とひらひら手を振っているのは可憐な女子大生…ではなくこれまた櫂兄に負けず劣らずの超絶イケメンだった。
突然男の人に出会って思わず固まる。
「カイ、この子が航くん?だっけ」
「あぁ、そうだ。」
ハッとしてとりあえずこんばんわ、と頭を下げる。
しかし僕の頭の中は?でいっぱいだった。
さとみさんはどこにいるの?この人は誰?
聞くに聞けなくて狼狽える僕に櫂兄が衝撃的な説明をしてくれた。
「航、こいつはさとみ。俺がよく話すから知ってると思うけど…。同じ4年生で同じ学部のやつ」
「こんばんわ。お兄さんの家に勝手にお邪魔していてごめんなさい、航くん。俺は茶都見 陵介(さとみ りょうすけ)です。よろしくね」
ふわっと微笑んで丁寧にご挨拶をしてくれたこの物腰柔らかそうな超絶イケメンがさとみさん…!?
ていうかさとみって名字……!?
全部僕の勘違いだったの…!??
よくよく考えてみたら櫂兄は一言もさとみさんと付き合ってるとか彼女だとかは言わなかったし、前に好きだって言ってたのも恋愛感情じゃなくて友達としてってことだったのか…
1人で勘違いしていたのがどうしようもなく恥ずかしくて、2人に申し訳なくてなんだか泣きそうだった。
目に涙を溜めて震えている僕の目をさとみさんが心配そうに覗き込んできた。さとみさんは僕より15センチほど背が高いように見える。
「航くん!泣いてる…どうしたの?」
櫂兄が明らかに誤解した感じで「航はお前のことが苦手…」と言いかけたので慌てて遮って言う。
「ちがうんです!!僕が……僕が勝手に勘違いしてて…その、さとみさんを…櫂兄の彼女さんだと思ってて…勘違いが恥ずかしくてさとみさんに申し訳なくて…ごめんなさいっ」
ところどころ震え声だったけど本心のままをもう勢いで何とか言い切った。
しん、と静まり返る室内。実際は数秒だったんだろうけど僕には永遠に感じられた。
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