花火大会

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花火大会

陵介さんと友達になってから2週間ほど経ち、季節は夏真っ盛りの8月になった。僕は夏休みに入って、毎日蝉がミンミンミ"〜ンと限られた生を謳歌するように全力で鳴くのを自宅で聞いている。 友達になったと言っても、スマホで頻繁に他愛もないメッセージのやりとりをするようになったくらいで、僕らの関係性はそんなに大きくは変わっていない。 だけど、高校で常に人と壁を作って接している僕にはこんな風にメッセージをやりとりできる友達は周りにいなかったから、陵介さんの存在はすごく大きかった。 勉強の合間にトークの履歴を眺めて1人でるんるんしていると、ちょうどそのタイミングで陵介さんからメッセージが来た。 まずい、即既読をつけてしまった。 これでは僕がトーク画面を眺めていたことがバレバレじゃないか……うわめちゃくちゃ恥ずかしい…………。しかもこれは早く返信しないと既読無視になっちゃうやつ。 陵介さんから届いたメッセージには、 「来週花火大会あるよね。もし予定が空いていたら一緒に行かない?」 とあった。 トークを眺めていたのが多分バレた恥ずかしさと花火大会に誘ってもらえた嬉しさと早く返信をしなきゃ!と焦る気持ちとで混乱して既に脳内で花火が打ち上げられていた僕は、 「予定ないです!行きたいです!僕甚平持ってます!!」 と謎のアピールを付け加えてテンション高めに返信してしまった。即レスでこの勢いは引かれるかな……と送り終わってから頭がひんやり冷静になる。 でも陵介さんの既読も早くて、しゅぽっと音がしてすぐに返信が届いた。 「よかった!じゃあ俺も浴衣着ていくね」 り…陵介さんが浴衣……!?これは僕なんかが横を歩いていたら殺されちゃうんじゃないかと本気で心配した。陵介さんが颯爽と浴衣を着こなして女の子の視線を独り占めするのはゴリラでも分かることだ。 でもそんな心配以上にやっぱり陵介さんと回る花火大会は楽しみで楽しみで、その日から花火大会当日までまでは1日1日がすっごく長く感じてしまった。
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