7 無花果の背比べ

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7 無花果の背比べ

「え、私にですか?」 「ええ。昨夜のご無礼のお礼、といってはなんですが。」 薄桃色のハーフツインの女性はせせらぐ川のような澄んだ青の瞳を開かせた。この学校を卒業したわけでもない私だが、ここへ入るのは簡単だった。そもそもここを建てたのは私の曽祖父なのだから。今までこの美しい彼女に声を掛けるのに時間がかかってきていたのは緊張などからではない。彼女の兄に問題があるのだ。 「湖のほとりでティーパーティーをするんです。結構綺麗なのですよ。」 アルバ・ジャックライン。誰も立入ることの出来ない深淵の森からやってきた男、というのはまあ大人たちが言うことで。実際自分たちの問題はあの男が極度のシスコンだということだ。ビアンカ・レオンハルトはこの上なく美しくそりゃあもうほかの公爵家やなんなら王家までその美しさに見惚れるという噂だ。だがあの男はビアンカに手を出す前、そもそも目を合わせるのさえ許さない。シスコンの域を超えている。だが、 「もちろん、知らない客人も多いのですから貴女お一人でとは申しません。アルバ様もぜひご一緒に。あ、ジェラード様をお誘いするのも良いですね。」 私は他の奴らとは違う。兄も一緒に、と伝えると途端にビアンカは笑顔になった。私が気を使える優しい男にでも見えたか。それは違う。私はその厄介者の兄さえ丸め込んでやる!心の中で笑みを浮かべるがそれを表には出さない。 「まあ、兄もよろしいのですか。そんなこと仰ってくださるのバニラ様が初めてですわ。ああ見えて兄はお茶会が大好きなんです。きっと喜びますわ。」 シスコン野郎が茶が好きなのを把握してこの茶会を開催するのだ。全ては一目惚れした彼女の為に。 「では、茶会で会えるのを楽しみにしております。ごきげんよう。」 快くチケットを受け取ってもらえた。作戦は完璧だ。その為だけにこの学校に来たが来たかいがあった。 「うわっ!!」 「浮かれてるからですよ。ほら、しっかり立つ。」 従者に呆れられ、白い服が転んで汚れたとしても、だ。 ーーーーーーーー 「はあ?バニラ・レイアードから茶会の誘い?」 なんてことだ。お嬢様がよりによってやつからの招待状を受け取ってしまった。学校に来るなど完全に私の注意が足りなかった。 「なんでフルネームなのよ。それにもう行くって言っちゃったし。」 「大人気ないですよアルバ様。いいじゃないですか。いい加減そういうお年頃なのですよお嬢様も。」 ミレーナは呆れ顔だが私は黙ってなどいられない。 「だって私はお嬢様がこーんなにっ!小さい頃から、お守りしてきたのですよ?お年頃だから?そんな理由でお嬢様をおひとりで行かせるなんて。」 「そんな一cmくらいの私なんていーまーせーんー!最後まで聞いてよアルバ。バニラさんね、貴方やジェラードさんも連れてきていいって。」 「はい?」 どういうことだ?これは敵に塩を送るのと同じだぞ。バニラ・レイアードは少しおかしいのではないか。 「ていうか私一人の誘いなんて私もお断りだし。アルバもいいって言うからOKだしたのよ。いろんな種類のお茶が揃うんだって。アルバ、喜ぶかなって思ったの。」 そう言ってむくれるお嬢様は相変わらず可愛らしかった。私の為に誘いを受けてくれたのか。 「…仕方ないですね。今回だけですけれども。ごほんごほん。」 「お?相棒。行くことにしたのか。だったら俺も行くよ。ビアンカ嬢を守るナイトの一人として、な。」 ウインクを決めるジェラ。まあ確かに茶についてもう少し知識をつけたい所ではあった。当日必要以上にお嬢様をやつに近づかせなければいいだけだ。 「やった!じゃあ決まりね。」 そんな軽く考えていた自分を後から殴りたくなるというのはまあ、誰もが予想がつくことだろう。
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