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かけがえのないあなたへ
ねえサーシャ。今あなたはどこで何をしているの? 天国で楽しく過ごしているのかな? それとも、死後の世界なんて存在しなくて、ずっと現世を彷徨っているのかしら? もしそうなら、私の傍にいてくれたら嬉しい。
私とあなたは昔からずっと一緒にいたわよね。家が隣同士で歳も同じで、おまけに誕生日まで一日違いなんてね。ほんと、運命を感じるわ。
小さい頃、親の目を盗んで一緒に家を抜け出したことがあったわよね。二人だけで近所の森の中に入っていって、「宝探し!」なんて言いながらそこらじゅう穴を掘りまくって。結局宝なんて見つからなかったし、探しに来た親たちにこっぴどく叱られたけど、いい思い出よ。なんであんな場所に宝があるなんて考えたんだろうなって思うけどね。全く、子供って考えることが謎だわ。親たちに読んでもらった本に宝探しのくだりがあって、それで宝探ししたいって思ったのは覚えてる。
この件もそうだし人助け活動を始めた動機もそうだけど、本の影響受け過ぎね、私たち。
あの頃から、私がものを考えてあなたがメインで行動するっていう構図が出来上がっていた気がするわ。それが十年以上も続くなんて、なんだか不思議よね。
出会ってから十五年。二人だけで行動するようになってから十年。一緒に慈善活動を始めてから一年。私たちは、いつしか二人一緒なら何でもできるようになっていたわね。辛い時も悲しい時も、二人一緒なら乗り越えられた。お互いを知り尽くしたあなたとなら、どんな苦難が待ち受けていても大丈夫だと思ってた。
けど、それは私の甘えだった。二人一緒に乗り越えている気になっていたし、あなたの子のなら何でも分かっているつもりでいたけど、実際はあなたが支えてくれていたのね。私はそれに気がつけなかった。あなたの優しさに甘えてしまっていた。
あなたの苦しみを完璧に理解できなくてごめんなさい。異変に気がついてあげられなくてごめんなさい。癒してあげられなくてごめんなさい。そして、こんな私と一緒にいてくれて本当にありがとう。
何度も喧嘩することもあったし、「絶交だ!」なんて宣言したこともあったけど、私は貴方のことが大好きだった。嫌いになったことなんてなかった。昔から、あなたのすべてが愛おしかった。「恋」と呼べるくらいには、あなたのことを愛していた。
気持ち悪いわよね。家族同然に育って、普通ならこんな感情が生まれるはずなんてないのにね。
気持ち悪がってくれていいし、何言ってるのって笑ってくれて構わない。けど、ずっとあなたに伝えたかった。それだけは分かって欲しい。
もし願いがかなうなら、死後の世界でもあなたに会いたいな。また一緒に色んな場所に行って、いろんなことをしたい。今度こそはあなたを支えたい。
私の独りよがりなのはわかっているし、後を追ったと知ったらあなたが困惑することも想像に難くないけれど……。再会できる日を楽しみにしているわ。
今そっちに行くわね。待ってて、サーシャ。
○月×日 レナ
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