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「ごめんなさい、私、全くあなたのこと知らなくて・・・探してたってどういうこと?」
「僕は、佐古さんが死んじゃう前にあんなさんの話を聞いてました」
「えっ?零斗から?」
少年の口から思いがけない言葉が飛び出してきたので、杏菜は目を丸くする。
零斗が亡くなる前に、会って話をしたということだろうか。
「あんなさんにしか、本当のことを言うなって言われたんです。今から僕の話、聞いてくれますか?」
少年は今にも泣き出しそうな顔で、見つめてくる。零斗はこの少年に何かを託していると感じた杏菜は、申し出を受け入れることにした。
「分かった。ここじゃ、寒いからどこか温かい所に移動しようか?」
2人は近くのカフェに移動すると、対面で座った。この店は2ヶ月前に、あいりを連れたあかりと訪れた店だった。杏菜はホットコーヒー、少年はホットココアを注文する。
「まず、自己紹介からするね。私は桃山杏菜。あなたが言っていた通り、佐古零斗の恋人・・・なのかな、一応」
「僕は掛川保です。小学生4年生です。佐古さんとはそこの歩道で猫を探している時に出会いました」
保はそう挨拶すると、深々とお辞儀をする。杏菜は見た目で小学3年生ぐらいかと思っていたが、実年齢は少し上だった。どおりでしっかりしているはずだど、1人で納得する。
「・・・猫?」
「そうです、僕の飼ってる猫のトルテを探してたんです」
それから保は、零斗と出会った時の事をゆっくりと話してくれた。
1月21日の夕方18時頃。
保は猫のトルテを、1人で探していた。うっかり家の窓を開けっ放しにしてしまって、トルテが外に逃げてしまったのだ。
北海道の夜は恐ろしい程、寒い。こんな中に子猫のトルテを放置したら、凍えて死んでしまう。保は焦って、トルテを追いかけた。
トルテは3日前に、友達の家から貰ってきたばかりだった。友達の猫が子どもを産んで、里親を探していたのだ。家に遊びに行った時に子猫達を見た保は、可愛い猫が欲しくてたまらなくなり、母親に飼いたいと頼み込んだ。最初は反対していた母親も保の熱意に負けて、最後は首を縦にふってくれたのだ。
「ちゃんと自分で面倒をみる!この子は僕が守る!」
そう約束して、飼い始めたトルテ。
それなのに保は、早々に外へ逃がしてしまった。
何としても見つけなければならないと気持ちだけが焦り、時間が過ぎていく。
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