3人が本棚に入れています
本棚に追加
/5ページ
ゆり子はふと気がついた。目の前はほの暗く、小さな光がまばらに輝いているのを見た。首を動かして辺りを見回してみる。全く見覚えのないところのようであった。そして体を動かそうとした。だが動かない。全身が何かで縛られているような感じであった。
そのとき、声がした。低い男の声のようだった。
「お目覚めかね、ゆり子君。ようこそ、我が組織へ。我々は君を歓迎する」
それに対し、ゆり子は答えた。
「え、どういうこと。組織って何?あなたは誰?」
声の主が説明を始める。
「申し遅れた。私はこの組織の首領である。言ってみれば頂点のボスだ。我が組織は君の優秀な肉体に感銘を受け、引き入れることにした。そして君の体を改造して組織の一員として働いてもらうことにしたというわけだ」
ゆり子はもう一度辺りを見回した。自分の他に誰もいない。
「あなたどこにいるの。声は聞こえるんだけど」
「今君の周りには誰もいない。私は別の部屋で君と話している。さっきまで大勢の研究員達がいて君に改造手術を施したところだ」
「手術ですって?私をどうしようとしたの」
「君は新たにサイボーグとなって生まれ変わった。これまで以上にパワーとスピードを兼ね備え、戦闘能力が格段にアップされている。そして我が組織に刃向かう者共を排除すべく戦いにおもむいてもらうということだ」
「組織って言ってるけど、何をするの?目的は?」
「この地球上は人類があふれ過ぎて人口爆発を起こしている。そこで4分の3の人間共に犠牲になってもらうのだ」
「犠牲ってどういうこと?」
「一言で言えば大量虐殺だ」
「何ですって?そんなこと許さないわ」
「君は組織に刃向かうつもりか。裏切り者は死んでもらうことになっている。多くの刺客達を送り込んで処刑してやるのだ。そうなる前に今君を縛りつけている。ゆっくり考える時間を与えよう。君の限界以上の力で縛っている。脱出は不可能だ」
ゆり子は何とかして抜け出そうと必死に力を込めた。
「無駄だ。悪あがきはよせ」
更に力んで、縛っている鎖にあらがおうとし続けた。そして・・・。
「何、ば、バカな」
鎖がちぎれた。縛っていた鎖のいくつかを引きちぎり、起き上がり、そして自分が寝かされていた台の上から飛び出した。そして走り出した。
「お、おのれ~。裏切り者だ~。構わん、見つけ次第、抹殺せよ~」
ボスの声に反応してか、多くの組織の一員共が、ゆり子の方に向かって突進してきた。そしてゆり子の近くまで来た者達が、ゆり子に向かってなぐったり武器を振りかざしたりして攻撃してきた。それをうまくよけながら、ゆり子のほうからも、なぐるけるなどの攻撃を行なった。ゆり子はむしろ驚いた。いつの間にこんな力と速さが身に付いていたのだろうか。改造されたというのは本当なのだろうか。
そしてゆり子は攻撃を繰り返しつつ、走っていった。刺客達がやって来た方向に出口があるに違いない。そう考えながら進んでいく。そしてようやく、壁のところにある出入り口にまで到達した。それからそこをくぐっていくと、廊下のようなところに出た。なおも進んでいった。とにかく進んでいった。やがて大きな扉のあるところまで来て、それを開けようとしたが、動かない。力を込めてたたいてみた。扉の一部が破壊され、自分が通っていけるほどの穴が空いた。そしてそこを抜けていくと、突然明るくなった。どうやら基地の外に出ることができたようだ。
最初のコメントを投稿しよう!