まさか

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吹き抜ける風が木々を揺らし、サワサワと音を立てている。 季節はもうすぐ夏になろうとしていた。 少し蒸し暑い気温に、心地よい風が肌をなでる。 私は今、校舎裏にいる。 人を待っている。 下駄箱に入れた直筆の手紙を、読んでくれているだろうか、誤字はなかっただろうかと不安に思いながら。 そして、こちらに向かう人影を見つける。 彼が私の、想い人であることは間違いがなかった。 授業中に見た、彼の横顔。 眠そうに、だるそうに黒板を見つめ、仕方なしといった様子で板書をとる彼の横顔。 休み時間に、お友達と楽しそうに話す彼の後ろ姿。 全てが愛おしかった。 一時は、私なんかがと思っていたが、どうしても彼の隣にいたかったので、手紙を書いた。 どうすればいいだろう、どうしたら付き合ってもらえるのだろう。 そう思い、スマートフォンで一所懸命に検索した。 『lineやメールで告白するより、やっぱり直接!』 なかなかハードルの高いことを言ってくれるな、とは思ったが、だがはやりというべきか、納得はしてしまう。 文字のみでは感情が伝わりにくいものだと、どこかで読んだ気がする。 だから、私は紙に文字を綴った。 『放課後、校舎裏にきてください』
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