まさか

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シンプルに、それだけを書いた。 他にいろいろ書こうとも思ったが、思いの外、こと現代において手紙を書くというのは気恥ずかしくかった。 何を書いても納得いかず、いっそのことと思い書いた文字。 少しシンプルすぎただろうか、と思いもしたが、如何せん手紙を書いた時間は深夜の1時。 眠い目をこすりながらだったため、判断力が鈍っていたのかもしれない。 まぁもう、下駄箱にいれてしまったのだから後戻りはできない。 さらに言えば、入れた相手も来てしまっているのだから尚更である。 そして、彼が私の前で歩みを止めた。 「えっと、君が、手紙をくれた人?」 「は、はい。同じクラスの、木更津麻衣と申します」 「木更津さんか。いつも本読んでる子だよね。今日はどうしたの?」 覚えててくれたのか。話したこともない、私のことを。 それだけで、何か満たされた気持ちになってしまった。 ここからが本番だというのに。 「覚えててくれたんですね。」 「そりゃそうだよ。同じクラスじゃん。」 「ありがとうございます。」 「いやいや。それで、今日はどうしたの?」 同じ質問をさせてしまった、とちょっと申し訳ない気持ちになる。 「あの、そのですね。一度もお話したことがない身でありながら大変申し訳ないのですが」 といったところで、彼が制止する。 「木更津さん、そんな畏まらないでよ。肩の力抜いて。ここに呼び出したってことは、そういうことでしょ?」
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