0人が本棚に入れています
本棚に追加
そう、そうである。
恋愛漫画や小説でよくある、校舎裏で告白。
使い古された芸当でありながら、なおも廃れることのない王道ともいうべきもの。
見透かされていた。
その事実に、私は赤面してしまう。
「あの・・・はい。そういうことです。」
「そうだよね。大丈夫だよ、僕は君の気持ちを正面から受け止めるから。」
「ありがとう、ございます」
先ほどの畏まらないで、という言葉を受け、言葉がつまってしまう。
「あの、その、す、す・・・」
ここから先の言葉が出てこない。
いざ面と向かって言うとなると、こんなに恥ずかしいものなのか。
たった二文字に、自分の気持ちをのせるだけなのに、こんなにも難しいなんて。
だというのに、彼はただ、私の言葉が紡がれるのをひたすら待ってくれている。
何も言わずに、ただ、待ってくれている。
優しくも、笑わずに、ただひたすら。
「・・・・・すみません、一度深呼吸をしてもいいでしょうか」
「大丈夫だよ。いくらでも待つから」
「ありがとうございます」
緊張を解くには、一度空気を全部吐いてから、鼻から空気をすうとよいと、どこかで見た気がする。
二回、三回と繰り返す。
次第に、上がった肩が下がった気がする。
先ほどよりはマシ程度であるが、それなりに落ち着けた。
その間も彼はただ待ってくれていた。
あぁ、あなたの優しさはどこまでも深いらしい。
私は彼に向き直る。
最初のコメントを投稿しよう!