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「落ち着いた?」
「はい、あの、本当にありがとうございます。」
「ううん、大丈夫。」
「それでは、改めまして。」
そして、ほんの少しの間。
すでに時は遅く、学校に残る人は運動系の部活に入っている人のみである。
真っ赤に焼けた夕日が、私たちの住み慣れた街を赤く染める。
もうそろそろ、商店街のお店が閉まる時間だ。
夕飯の準備を、お母さんがしてくれているだろう。
お父さんはお仕事でクタクタになりながら、簡単な家事をお手伝いして。
私もそれをお手伝いして。
家族三人で、テーブルを囲み、食事をとる。
そんな時間である。
「弓弦くん、私は、あなたのことが好きです。お付き合いをしていただけないでしょうか。」
言った、言ってしまった。
私の、一生分ともとれる勇気。
どうか、どうかこの恋が、実を結びますように・・・
「ありがとう、木更津さん。すごくうれしい。」
あぁ、それ以上は言わないで。
そのあとに続く言葉を、私は聞きたくない。
恋愛漫画であれば、このあと私は”フラれてしまう。”
お願い、時間を戻して。
私が手紙を書き、ここに彼を呼び出そうと思うあの時間まで、戻して。
「でもごめんなさい、木更津さん、その申し出は受け入れられないんだ。僕には、好きな人がいる。」
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