まさか

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素っ頓狂な声が出てしまった。 彼が、私を? なぜ? 思考が追い付かない。 「実は、ずっと前から一目惚れだったんだ。君の横顔、本を読んでるときの手付き、友達がいないんじゃなく、作らないという感じの孤高感。すごく、魅力的だった。」 いや、私の場合は友達がいないだけなのだが。 それにしても孤高感とはなんだろう。 褒められているのか、貶されているのかわからなくなってきた。 「かっこよかったんだ。何にも染められず、自分の世界があって。僕にはそれがない。友達がいないと自分の存在価値がないような気がして、どうしても木更津さんのようになれなかった。」 つまりはあれだろうか。 私が好きになった木更津くんは、なりそこないの中二病患者というやつだろうか。 「はじめは憧れだったんだよ。木更津さんみたいになりたいって。でも気づいたら、木更津さんのことばかり考えるようになっちゃって。」 やめて。 それ以上私の好きな結弦君像を崩さないで。 私の好きな結弦君を返して。 「だから、どうか木更津さん、僕と付き合ってもらえないだろうか。」 あぁ、この人が私の好きな人。 間違いなく本人であるにも関わらず。 それでも、この人とお付き合いできると思うと。 全てがどうでもよかった。 「・・・・はい、よろしくお願いします。」 「ありがとう木更津さん、こちらこそ、よろしく。」 なんということだろうか。 私の青春は、どこか闇のように深い色をしていたらしい。 まだまだ夕日が灼熱の業火に焼かれたように真っ赤に燃えている。 肌をなでる風が心地よく、風をなでる。 季節はもう、夏になっているようだった。
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