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 両親が居ない。その言葉は、私にも思うところがあった。私も早くに両親を亡くしていたからだ。父方には親戚が居るには居るが、父は母と駆け落ち同然で結婚して以来、勘当されていたのだ。父も親戚とは疎遠になることを望んでいた。それ故、私は親戚との付き合いを、今まで一切したことがなかった。 「一晩だけでもいいんです! お願いします」 「……」  見ず知らずの人物を家に入れるのは正直、躊躇(ためら)われるものだ。女性とはいえ知らない人間を夜、自宅に迎え入れるとなると、何か煩わしい事にでもならなければよいがと思う。しかし、怯える女性を深夜、無下に家から追い出すのもまた、リスクを伴うのではないだろうか。私は最善の判断を模索し思いを巡らせた。 「では、一晩だけ。明日には出て行ってくれるなら」 「もちろん努力します! あぁ良かった。貴方のように優しい方に声を掛けて、あたしは幸運でした」  彼女は同じマンションの独身者向け賃貸物件に住まう大西妙子(おおにし たえこ)と言う名の女子大学生だという。見た目が派手なのは、夜の街でアルバイトをしているからだと言った。
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