第2話 ちなみに日課は通学路のパトロールでした。

2/3
54人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 俺の名前は井上菫路(きんじ)。36歳、独身。  X県の精神科病院で医療相談員として真面目に働いていたが、若くして死んでしまった哀れな中年。何故か死因は思い出せない。  そして、ロリコン(【重要】社会的にはセーフな範囲)だ。  そう、社会的にはセーフ。  つまり俺は、ロリコンはロリコンでも紳士という名のロリコンなのだ!……ん?逆か?まあ良いや。  とにかく、俺が一度も性犯罪を犯していないことは蛍光ペンでなぞって赤ペンで二重下線を引くくらい重要事項だから覚えておいてほしい。  え?ロリコンな時点で社会的にはアウトじゃないかって?    くっ!これだからフツコン(注・ロリコンじゃない人。C●MICL●を買ったことがないものだけを指す)どもは!!俺たちロリコンがどれだけ幼女達に迷惑をかけないように生活しているのか全く分かってないな!!  日常生活では充分過ぎるほど距離を置きつつも、彼女達の安全のため自治会の見守り活動には積極的に参加。(最初は白い目で見ていたお母様達ともだいぶ仲良くなれた)  プ●キュア映画の上映期間には毎週のように映画館に足を運び、最後尾の隅っこの席で女児達がプリ●ュアを応援する奇跡の光に涙する。ふええ、ぷぃきゅあがんばれ〜。  ……コホン、失礼。思い出したらついエモってしまった。  兎にも角にも、Z軸がある女児に手を出したことは人生で一度も無い。幼女神に誓ったっていい。  俺が【センシティブな内容が含まれているため表示出来ません】したことあるのは二次元の少女に対してだけだ。本当です信じて下さい。 「ぐすっ……ヴィオレッタお姉様、やっぱり怒っているのね。フィオーレのこと嫌いにならないで……」 「き、嫌いになってなんかないよ……ないわ!」  完全に私に嫌われたと思っているらしいフィオーレに慌てて笑いかける。  男だった頃の記憶が戻ってしまったせいで、今まで喋っていたはずのお嬢様言葉にどうにも抵抗があった。 「ほんとに?怒ってない?」 「ほんとほんと」 「じゃあ、仲直りのぎゅ〜して下さいな」  俺の妹がこんなに可愛い!!!  うるうるの上目遣いで細腕を広げる天使にグラりと理性が揺れる。  記憶が戻る前も妹のお願いには弱かったが、もしかしたら純幼女だった頃の俺もロリコンの気があったのかも知れない。  「家族と性癖は水と油」という持論を持っていた俺はロリコンであっても妹萌えはイマイチ理解出来なかったのだが、フィオーレは別らしい。  だが、ここは鋼鉄の自制心で踏み止まる。  こんなところで“不触(さわらず)の誓い”を破るわけにはいかぬのだ。鎮まれ心の逆刃刀! 「その……ほら!フィオーレももう9歳になるし、もう仲直りのハグは卒業した方が良いんじゃないかしらと思って……」 「大人は仲直りのハグしないの?」 「し、しないと思うよ……思うわ」  欲を言えば是非したいよ!仲直り以外でもね!! 「……お姉様がそう言うなら、わかったわ。ちょっと寂しいけれど」  まだ完全には納得がいかないようだが、とりあえずは私に嫌われてないことに安心したらしいフィオーレは、やっと笑顔を見せてくれた。やはり、少女の笑顔というのは何物にも代え難い宝物だ。
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!