失ったもの

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 はあ。  あの後、気持ちを落ち着けるため、トイレに走った。そして三十分くらいして、公園に戻るともう優たちに姿はなかった。  そのことに安心もしたが、同時に落胆した気持ち味わう。  でも仕事だと気合をいれると、カエル像の写真をデジカメに数枚収め、私は役場に戻った。 「今日は飲みにいくぞ」  その夜、係長の一声で飲み会になる。場所は昨日と同じナルト。  私は何だから自棄になって係の人たちが心配するくらい飲んだ。  もうどうでもよかった。  新しい世界、それはむなしいだけ。  忙しくても、あの世界、優の妻で、優斗の母だった世界に戻りたかった。 「白田、カラオケでも行くか?」  ぐでんぐでんに酔った私に、どこかで見たような男がそう聞いてきた。    誰だっけ?  ああ、商工係の前野さんだ。  そういや、この人も来てたんだ。 「あ、はい。行きます!」  自棄になってる私は元気よくそう答える。 「じゃ、行こう!」  そうして三次会はカラオケで始まる。  このころはすでに人数も5人までに減っていた。  げ、女って私だけ?  そう思いながら、係長に誘われデュエット曲を一緒に歌う。久々のカラオケだったけど、お酒がかなり入っていて、ハイテンションに歌い上げる。気分が最高だった。     ふわふわして、もうどうにでもなれっという気分だった。 「じゃ、またな」  夜十二時。 さすがに明日も仕事だと、お開きになった。 「じゃ、前野。白田を頼むな。送り狼にはなるなよ」    送り狼、そんな言葉あったなあ。  私はかなりお馬鹿になってる頭でそんなことを考える。 「白田。一緒にどこかで飲みなおさない?」  係長と木下さん達を見送った後、前野さんが私の腰に手を当てて囁いた。 「いいですね!どこ行きます?」  私はその手を腰からはずしながら答える。  まだ飲みたいという気持ちが先行し、他に何も考えらなかった。  飲まないと、優と優斗のことで気持ちが押しつぶされそうで怖かった。 「じゃ、俺がよく行ってる店で……!」   前野さんが私の肩を抱き、お店に案内しようと歩き出す。すると、不意に前に黒い影が立ちふさがる。 「並子。それはないんじゃない?」  それは佳緒留で、すこし怒っているような顔をしていた。 「深池、なんでお前がここに!」   前野さんは牙を剥く様に彼を睨みつける。 「……前野さん。彼女を離してもらえますか?」  しかし佳緒留は彼の威嚇に動じることなく、にっこりと笑う。  それはなぜか、前野さんを怯えさせ、肩を抱く手がすぐに下ろされた。 「じゃ、白田のことはよろしくな」  そうして彼はそう早口でまくし立てると、逃げるように立ち去る。  なんなの?  暗闇に消える背中を見ながら、私はどうしていいかわからず、ふわふわする気持ちでその場に立ち竦む。 「並子。僕に付き合って。まだ飲み足りないんだよね?」  半ば強引にそう言われ、私は佳緒留と一緒に飲み直すことになった。
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