ひとつめ

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ひとつめ

「ゆかー!今日ちょっと掃除当番かわってくれない?」 「んー?オッケー!しょうがないなー」 「もぉ、ゆかちゃんったら頼りになるぅ♪」 「よしっ!パックジュースで手を打とう!」 花野ゆか。高校二年生 人に頼られるとイヤと言えない性格。 ソンなのかトクなのかわからないけど、みんなが笑ってくれるんだったらそれでいい。 母親譲りのぽっちゃり体系。気にしていないわけではないけど、笑ってはねのけてしまったり、自虐ネタにしてしまったりなので、男子も話しやすいらしく友達も結構いる方だ。 でも・・・友達どまりなんだよね・・・ 恋にあこがれていないわけじゃない。いつか『あたしがいい』って言ってくれる人が現れてくれたらなー・・・と思っているけれど、現実はそんなに甘くないよね。 ある日、夏の文化祭に向けて実行委員を決めることになった。 「各クラス2人実行委員を選出するのだが、誰か立候補はいないか?」 文化祭は楽しいものだけど、いざ中心になってとなるとみんな避けてしまいがち。 うじうじ決まらないのって、ちょっとイヤなんだよね。 「じゃ、あたしやります」 「おお、そりゃよかった。花野なら適任だな。どうだみんな」 満場一致の拍手が沸き起こる。 男子の方もなんとか決まって、早々に放課後実行委員会が行われた。 「さて、実行委員長を決めるぞー。例年2年生から選ぶことになっているのだが、ま、立候補といってもなかなか出ないだろうから推薦してくれ」 みんな一斉に考え込む。 「そーだなぁ。性格が面白い奴ならいいんじゃないか?どうだ、山田」 「じゃー、花野さんがいいと思います」 はい??なにそれ?? 「おー、花野か。じゃ、川島どうだ」 「わたしも花野さんが適任だと思います」 ええーっ!ちょっと待ってよ。あたしってそんなに面白い奴っておもわれてんの?これって喜んでいいの? そんなこんなで、誰もが指名したことで断り切れなくなって 「じゃ、がんばります。よろしくお願いします」実行委員長決定。 「あとは副委員長だな。今度は1年から選んでくれ」 「高橋君がいいと思います」 すぐさま名前を出されるなんて、よっぽど人望が厚いのかな? その男子は恥ずかしそうに頭をかきながら 「じゃ、俺でいいですよ」 と立ち上がった。 「花野ゆかです。これからよろしくね。うーんと高橋・・・」 「涼太です。よろしく花野先輩」 笑顔がちょっぴりかわいくて、あやうくときめいてしまいそうだった。 委員長の仕事はそれなりに大変だけど、みんなの笑顔を想像するとやり替えさえ感じる。 てきぱきと仕事をこなすつもりが 「先輩。これ、字が間違ってますよ」 「えー!」 ドジってしまうこともしばしば。 その様子をにこやかな表情で見ている人がいることなど知らずに、いつもの調子で毎日を過ごしていた。
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