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僕にとって、それはあきらかな”敵前逃亡”としか見えなかった。
14巻において、会場のホテルにあったピアノで東丈は戯れに”別れの曲”を弾いて見せた。
しかし、これが失踪の複線だったといわれても・・ねえ。
「冗談は、ヨシコさんなんだよ~~~」僕は、思わず天に向かって叫んでいた。「超念動力者の”救世主”東丈がいなくなったら、この世界は、日本はどうなっちゃうんだよ」
この作品が妙にリアルなのにフィクションだというのに、だ。もしかしたらこの作品が別の世界の”異世界レポート”なのではないかとさえ思っていたかもしれない。
「もちろん、”幻魔”の大勝利で終わるのさ」
「そんなあ、それじゃあ、あまりにトホホホな話じゃないですか。この世の中に神も仏もありゃしない。そんな救いのない世界があってたまるものか。物語とは、ハッピーエンドになってこそ、というものでしょ?もちろん、その途中では、波乱万丈の大騒ぎがあって当然なんだけど」
「それこそ、漫画の読みすぎってものだぞ、おまえさん。世の中、みんながハッピーエンドになったら、誰も苦労はしないのだ。そういうのを、世間知らずというのさ」
「世間知らずであろうとなかろうと、物語は、ハッピーエンドが当然。それこそ、真犯人がわからないままに終わる推理小説がありえないように」
「だからよ、平井和正氏の作品のリアルさとは、まさに現実社会がもつ不条理さをきちんと活写しているからに他ならないのだ。だから、そのアンハッピーエンドであることに文句を言っても始まるまいが」
「だから、リアルというのは”うまくいかない”から?」
「そうだよ、失敗の連続こそが、人生というものなのだ。それがわからず、成功だけを追い求め、そうなると考えるお前さんの頭の中こそがちーぱっぱなのだ。知能指数が存在しない、お子ちゃま頭の持ち主ってやつだな。よく、人間をやっているものだ。そんなやつが、それでもこれまで生きてこれたのは、まさに、それだけ”守られて来た”のだな」
「え・・」
「なんだ、おまえさんは、まさか、今日まで、自分の力だけで生きてこれたと思っているのじゃなかろうな、だとすれば、よほどかお目出度いといわざるをえん。まあ、知能障害のあるお前さんなら、わからなくて当然だろうがな」
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