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「え、東丈がいなくなったって、どういうこと」
新しく発行された角川文庫版”幻魔大戦”の15巻を読んだ僕は、パニックになった。凍りついたといっていい。
おそらく、何度繰り返してもいいすぎにはならないのだろう、もちろんそれは、読者諸氏にとってではなく筆者である僕自身にとってである。
"東丈"失踪はそれほど僕にとっては人生の大事件であった。たかが小説の中の、主人公とはいえ、登場人物の去就で・・と笑わないでほしい。それほど、僕はこの物語に”入れ込んで”いたのだよ。
その緑の背表紙の文庫本を、何度も見返したのを覚えている。
うろが来ていた。
”こんなことがあってはならない”
僕は、闇雲に街に出た。
大宇宙から押し寄せる、幻魔と呼ばれる常識はずれの超能力を持った宇宙生命体、宇宙怪獣とも宇宙怪人ともいえる恐るべき存在。なにしろ、地球人からすれば超科学というしかない、広大な宇宙を縦横に行き来できる文明圏の作った”大連盟”軍の宇宙艦隊さえものともしない化け物ども。
その本隊ではないが、先遣部隊がこの地球に攻撃してくる。それを迎撃できるのは、その怪物たちと同様の超能力戦士のみ。
主人公の高校生東丈は、彼の超能力を開花させ、召集したルーナ王女たちから離れ、日本で独自の超能力者軍団GENKENを立ち上げた。
人間には、誰にも隠された潜在超能力があり、それを引き出し、”光のネットワーク”を作り上げることができれば、十分に幻魔の尖兵に対抗することができるのだ。
では、強力な超能力者を、”幻魔”と”太陽の戦士”を分けるのは何か。
利己的に我欲で超能力を使うか、みんなのために使うかしかないだろう。
そして、自分が利己的か否かを常に良心にかんがみてチェックしないと、他止めなく我欲に飲まれ、挙句に”幻魔”になってしまう。
そのチェック行為を”反省”と呼んで・・
GENKENに関していえば”新興宗教団体”立ち上げとしか理解できない世話役の大人どもをすでに当初期に排除していたはずなのに。
読者である僕自身も、それでも”新興宗教化”していることに気がつかないで、その組織の見せる”夢”に酔いしれていた。
そして物語的にきっとひとつのクライマックスになるはずのGENKEN初の”箱根セミナー”の会場から、東丈が失踪したのである。
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