むかしむかしの物語

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十日ほど経ったころだろうか、里の近くで嗅ぎなれない匂いがした。 そっと近づくと、見慣れぬ八人程の兵士の一団が、 里の入り口でもあるつり橋の手前で(じん)を張っている。 この匂いは、鉄と火薬の匂いだ。 オレの一番昔の記憶の底にあった匂いだ。 この匂いの後オレの母である人が、 この地にたどり着いて動かなくなったのだ。 あれは悪いモノだ。 あの子に近付けてはいけない。 風に乗って、話し声が聞こえた。 「……の先に姿をみたものが・・・。」 「みしるしだけでも・・・持ちかえり・・手柄を・・。」 「まず里の者たちを全て殺し・・・」 オレは渾身(こんしん)の力で、大将らしき男に石を投げつけた。 大将はものも言わずに、案山子(かかし)のように倒れ込んだ。 一斉に、他の男たちが振り返る。
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