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ふいにその陽が遮られた。
オレは目を開けると同時に、起きあがり身がまえてあっけにとられた。
年の頃六つほどの童子が、しゃがんでオレを覗きこんできたのだ。
「なんだお前は!オレは鬼だぞうっ!喰っちまうぞっ!」
オレはとびっきりの怖い顔と声ですごんで見せた。
童子はきょとんとした顔でオレを真っ直ぐに見返した。
「オヌシはワレを喰らうのか?」
オレは戸惑った。
今まではそう言うと、皆腰をぬかすか気を失うかのどちらかで
話しかけられたのは初めてだった。
「お、おうっ!喰うぞっ!そこのカニみたいにぺしゃんこにして、頭からばりばりと食うぞっ!」
「へーえ。」童子は感心したようにオレを見上げると、にこにこしながら近寄ってきた。
「ワレはカニのように旨いのか?それは知らなかった。鬼というのはすごいのう。」
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