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思いっきり不機嫌な顔をして、カニの汁ものを作った。
童子は火にかけられた鍋の前で、きちんと猫のように正座をしている。
いじわるに喰わせてやるのをやめようかとも思ったが、
その嬉しそうな顔を見ていると、その気持ちも萎えた。
ひとつしかない欠けた椀に、カニをよそうと童子に差し出した。
童子はにこにこしてきちんと一礼すると、受け取ってひと口すすり目を細めた。
「うまいなぁ!」
「ワレがこれを喰ったら、今度はオヌシがワレを美味しく喰うのか?」
オレはむすっとして答えた。
「オレは人なんぞ喰ったこと無い。」
「おお、そうであったのか。オヌシは変わった鬼なのだな。」
オレはぐぅうと喉の奥で唸った。
「喰ったら里まで送ってやるから、さっさと帰えれ。」
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