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むかしむかしの物語
「こらーーっ!喰っちまうぞーーっ!」
キノコ採りに来ていたらしいバアさまの後ろにそっと近づくと、
オレは腹の底から叫んだ。
「ひょえええええ~~っ!」
バアさまはキノコでいっぱいの籠を放り投げると、
ころころと坂を転がり落ちて行った。
「うわはっはっはっはっはっ!!」
オレはキノコをかき集めると、
自分の背負いかごにぽんぽーんと入れて走って逃げた。
今日はキノコ汁にしよう。
後は・・・・魚がよいなぁ。
川に出ると、いたいた。
渓流に半ば浸かりながら、釣り糸をたれてじっと川面を見つめているおやじさん。
その脇の魚籠からは、大きなイワナの尻尾がぴちぴちと見え隠れしている。
オレはそおっと忍び寄るとまたまた大声で哮えた。
「うおおおおおおおっ!!!」
おやじさんは振り返ると飛びださんばかりの目玉でオレを見つめて
オレとあまり変わらないでかい声で叫んだ。
「うわああああっ!!!鬼じゃぁあああっ!!」
おやじさんは顔いっぱいに口を開いたまま、尻からそのまま川へつっこみ、
速い流れに流されていった。
よしよし。これで魚もオレのもんだ。
戦利品は、まるまるとしたイワナを3匹。
川沿いの笹竹の小枝をぱくぱくしている口に突っ込むと、
そのまままた背負い籠に入れて
オレは大満足で棲み家に帰った。
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