人身御宮のその先は

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 俺の村は人里離れた山の奥にひっそりとある。農作、酪農をやっている家が大半を占め、必要な物は物々交換し、村にない甘味物や反物などが欲しいときは遠くの町に食材などを売り、そのお金で買っていた。  今年は天災が続いた。急な大雨による土砂崩れ、何日にも続く雨による作物の根腐れ、追い討ちをかけるように昨日地鳴りが起こり、天変地異が起こるのではないかと村のみんなが慄いた。このままでは飢饉になり、苦しくなると。  村の大人達は子どもが寝たあと、集会を開いた。今後どうしていくか、対策はどうするのか。満場一致で決まったのは、村の守り神である山神様に人身御供を捧げること。 誰を捧げるか。若く、容姿も端麗な者。しかし自分の子どもは手離したくない。その条件下で1人の男子の名が上がった。  ぱっちりとした二重に艶のある黒髪、張りのある肌で見目麗しい。毎日農作業もしており、健康体である。両親は原因不明の高熱で6年前に亡くなっており、身寄りもない。人身御供として最適であった。   「お告げだ。神への捧げ者としてお前が選ばれた。」 「….自分ですか…?」  翌朝、少年に集会の結果がお告げとして伝えられた。天災はここ数十年なかったため、人身御供の話は昔話として聞いたことはあるがまさか自分がなるとは信じられなかった。 「みんなの命がかかっているのだ。お願いだ、頼む。」  村長や他の大人達も頭を下げた。大人が自分に対してこのような態度をとったのは初めてだった。  両親が亡くなった後、両親の死因が原因不明であったことから気味悪がれ、村の人からは距離を置かれていた。物々交換も渋られる程で、細々と自分で野菜を育て食べていた。大人の態度は子どもも真似をし、積極的に自分と関わる者はいない。孤独を感じ、生きている意味を見出せなかった。  どうせ生きていたって何も楽しいことはない。自分の命で村が助かるのならいいことだ。   「頭を上げてください。…自分でよければよろしくお願いします。」     自分は人身御供になることを受け入れた。 「この一本道の先に山神様を祀っている祠がある。祠の鍵は開けておる。中に入り、山神様が来るのを待つのだ。」  お告げを受け入れた後より、身を清められ、捧げ者が着用する絹で作られた真っ白の長襦袢を着た。首や頭には赤や黄色など彩り豊かな乾燥した木ノ実で作られた輪を着ける。  夜には今までにない豪勢な食事で、村全体で豊作を願う予祝を行った。何度か食事を促されたが、食事は喉を通らず、お茶で口を潤した。  そして祭りが終わり、午後零時。一本の松明を渡され、村人に見送られながら祠に向かって山道を歩いていった。      村人達が持っていた松明の火も見えなくなり、自分が持っている松明の火だけが辺りを照らしている。  風が吹くたびに葉が擦れ、森全体がざわざわとする。自分の足音が大きく聞こえ、一寸先も闇であり、徐々に恐怖が強くなる。 (祠まであとどれくらいなのだろう…。熊がでたりしたら自分はどうすれば……。)      ガサガサっと近くで音がした。    身体が強張り、足を止める。風ではない。何かがいる。松明の光で寄ってきてしまったのか。  息をする音までも大きく感じ、気づかれないようにゆっくりと呼吸をする。  再度ガサガサと音がなり、草むらの中から金色の目が光ったのが見えた。   「ぐるるる……」     唸る声も聞こえ、身体が竦む。足が震え、全身から汗が噴き出す。 ガザっと茂みから狼が顔を出した。    (お、狼だ……!)  噛まれるかもしれない。肉食動物なので、食べられてしまうかもしれない。  どうなってもいいと思っていたが、いざ死に直面すると恐怖でただただ慄いた。    (逃げなきゃ……)  でもどうやって?  息が苦しい。静かに息をしないといけないのに、浅く速い呼吸しかできず、徐々に呼気ができなくなった。松明の光があるはずなのに、徐々に視界が暗くなり、立っていられなくなる。松明を持っておくことができず、地面に落とした。 自分も意識を保っていられず、意識を手放した。        ✳︎      ✳︎       ✳︎  柔らかい綿毛で身体を包み込まれているような心地よさがある。  (死んじゃったのかな…。祠にまで行けなかった…。何にも出来ずに終わっちゃったな…。)  ゆっくりと瞼を上げるという木材を基調とした天井が見える。 「あ、あれ…?」  周りを見渡すと桜の花のような色合いの障子や若草色をした漆喰塗りの壁で5畳ほどの広さだった。    近くには楽のみやタライがあり、中に水が張ってある。起き上がるとタオルが額から落ちてきた。  (どなたか看病をしてくれたんだ…。)  嬉しさと一緒に胸の中心がぎゅーっと締め付けられるようにどきどきとした。  両親を亡くしてから、初めて他人から優しくして貰えた。嬉しくて涙が出てくる。    その時すーっと障子が開いた。看病してくれた人が来てくれたのだろう。お礼を言おうと布団から慌てて出て端座し、深くこうべを垂れた。 「助けてくださりありがとうございます。とても助かりました。」 「元気になったか。よい、頭を上げろ。」    「あっはい。」  頭を上げ、お顔を拝借する。お顔を見た時、思わず固まってしまった。    人ではない。    紺色の着物の上に灰色の羽織を羽織っており、生地も見た目より高級さが伺える。しかし顔、手足には産毛ではすまされない量の毛が見える。 見た目は狼だ。目は金色、尖った鼻に、大きな口。しかし二足歩行。そして、山にいる狼とは毛の色が違った。銀を主に金が混じっている。光が透けて、とても綺麗だ。 昔書物で見たことがある、獣人と呼ばれる妖怪にそっくりだ。    驚いたのと、見惚れていたこともあり、自分は動けないでいた。 「どうしたのだ?」  自分が動かないので、目の前の方が屈んで目線を合わせてくれる。近くで見るとさらに体格差がわかった。横の大きさは自分の2倍はありそうだ。背はもちろん高い。 「い、いえっ。あっじ、自分は貴方のような方を初めて拝見したので……」 「ああ…、そうだな。この姿は人前では見せない。いつもは狼の姿にて山を守っているのでな。驚いたか。」  ぴかっと目の前が光り、明るすぎて目を開けていられなくなった。光がやみ、目を開けると目の前には茶色の毛並みで一般的な狼がいた。 「あっ……狼……」  狼がパクパクと口を開けると、ウゥンウゥンと鳴く。しばらくしてまた獣人の姿に戻られた。 「狼の姿では人間と意思が伝わらないからな。この姿だ。」 「そうなのですか…。ありがとうございます。」 「ん?何に感謝をしているのだ。」 獣人は不思議そうに顎に手を当て、自分を見つめる。   「あっ、えっと。自分と話をしてくださる為にお姿を変えて下さったので、それに対する感謝で…す。」 「………ふむ。」  変なことを言ってしまっただろうか。不安になる。顔を俯いていると、顔を手で撫でられる。爪が長いが先が当たらないように触れ、爪甲の滑らかさと獣毛が猫のように柔らかく、怖くない。 「…名は何という?」  さわさわと触れてくれる手が心地いい。 「…はい、圭(ケイ)と申します。」  「圭……」  獣人の方は名前を呟くと、首のほうへ顔を近づけてきた。  久しぶりに名前を呼ばれた。両親が死んで、呼んでくれる人はいなかった。ぐっと胸が締め付けられ、また目頭が熱くなってきた。  獣人の方がすんすんと匂いを嗅ぐような音が耳元でする。山道を歩いてきたので臭うのだろうか。申し訳ない。恥ずかしさで顔に熱が集まる。顔が近いので獣人の方の匂いもする。獣人の方は山の匂いだ。 土や草や森などの安らぐ匂い。 「圭は人間臭くないな。草食動物のような匂いだ。」 「えっ?」 「肉や米や乳、油などの混じった匂いがしない。人間は全ての匂いを纏っているのにお主は米と野菜の匂いしかせぬ。」 「ああ…。自分は6年前から米と野菜しか食べておりませんので、それでかと……。」 「なんと。誠か。」 「はい。」  恐れられ、物々交換すら満足に出来なかっただけである。苦い気持ちがあがってくる。     「今回の捧げ物は優良だな。」 「えっ」  捧げ物?優良?確かに自分は山神様の捧げ物として山道を歩いていた。意識を失ってここで目を覚まして……。  顔に疑問が浮かんでいたのか獣人の方がふっと口角をあげ、目を細める。 「圭は私への供物であろう?」   ………もしかして。 「…………山神様?」 「そう呼ばれておる。名は聡慧(ソウケイ)と申す。」 「聡慧様……」  見ず知らずの方に助けて頂いたと思っていたが山神様だったのか。聡慧…山神様の山は聡慧山と呼ばれていた。そうか。よかった。無事に人身御供ができたのだ。  供物がすべき事。  たどり着けないと思ったが、たどり着けたのだ。  しっかりと果たさなければ。      一歩身を引き、深々とお辞儀をした。 「聡慧様。改めまして圭と申します。村より聡慧様への供物として参りました。どうぞお好きにお使い下さい。村を引き続きお守りいただきます様よろしくお願い致します。」    何をするのだろう。供物であるなら食べられるのだろうか。  生きたまま食べられると痛みは耐えれるだろうか。泣き叫ばないようにしなければ。一思いに殺して声を出せないようにして欲しい。  これから死ぬと思うと指先が震えた。でも看病してくれて、名前も呼んで貰えた。 それだけで十分だ。      聡慧様が手を撫で、包み込むように優しく触れた。温かさを感じ思わず顔を上げてしまう。聡慧様はゆっくりと微笑んだ。 「手が震えておる。…余が怖いか?」 「あ…すみません。聡慧様は怖くありません。あ、あの不躾なのですが、食べられる時に叫ぶかもしれないので、先に声が出ないようにして頂けると嬉しいです。叫んで粗相をしそうで……。」    何も言わずに粗相をするよりもよいと思いお願いしてみたが、聡慧様の顔はぽかんと驚かれたような顔をされる。そしてくっくっと笑われた。 「そうか…。食べられると思い震えていたのだな。」  聡慧様はゆっくりと抱きしめると、布団の上に押し倒された。 「咀嚼はしない。しかし圭は私とまぐわうのだ。」   「まぐわう……自分と聡慧様が…?」 「怖くなったか?」  怖い…?見目は人とは異なる。しかし、自分と話をしてくださり、優しく温かく触れて下さった。同じ見目の人の方が怖いぐらいだ。  「それはありません。私は…その、人とも経験がありません。聡慧様がご相手では、それこそ粗相をしてしまいそうで…。恐れ多いです。」   「嫌ではないか?」 「まさかっ。両親を亡くした後に看病して下さり、自分の名前を呼んでくださったのは聡慧様だけです。とても心が温かくなりました。聡慧様が自分を欲して下さるのならとても嬉しゅうございます。」 「そうか…。」  慈しむようなお顔をされ、ゆっくりと私を抱きしめて下さる。ふわふわとした毛が気持ちよく、温かい。     「余は圭の容姿も匂いも立ち振る舞いも愛しいと思うてる。余に身体を授けれくれ。」   金色の目と合う。とても綺麗で目が離せなくなった。     「はい……。好きにして下さい…。」  聡慧様の顔が近づき、口を舐められた。ちゅっちゅっと接吻をする度に粘膜と柔らかい毛が顔に触れる。  緊張が解れ、口を軽く開けていると長い舌が口の中に入ってきた。 「んっんん……っ」  口の中を無造作に動く。時折犬歯が唇や頬に当たり、食べられている感覚に陥る。    聡慧様の唾液は甘露のようだった。山の湧水に桃の果汁を絞ったような甘さと瀞(とろ)みがある。  喉が乾いていたことを思い出し、聡慧様の唾液をごくごくと喉を鳴らしながら飲み込む。食道、胃を通し、身体に浸透していく感覚が巡る。聡慧様の口から唾液が垂れると掬(すく)うようにして舐めた。   「…余の唾液が美味いのか?」    聡慧様から言われ、自分が無我夢中で飲んでいたことに気づいた。 「あっ…はしたなくてすみません…っ!」 「よいぞ。嬉しい。もっと飲め。余の唾液は人間には媚薬だ。後が楽になる。」 「媚薬……」 「気持ちも落ち着く効果もある。…圭は初めてだからな。何も我慢しなくていい。痛いときも気持ちがいいときも声に出せ。余は圭の気持ちや声をしっかりと聞きたい。」      聡慧様のお言葉に、ぐっと喉が絞られ、目頭が熱くなり、涙が溢れてきた。 「…どうしたのだ?」  急な涙に聡慧様が接吻をやめ、顔や頭をゆっくりと撫でる。その優しい手つきにまた涙が溢れる。  話そうとするが嗚咽でうまく話せない。 「ゆっくりでいい」  聡慧様はそう言うと、撫でながら自分が話すのを待って下さった。      「じ…自分は両親が…亡くなり……、今まで人に避けられて……生きてきました…。自分の気持ち…を…言える…、聞いてくれる人は…いませんでした…。聡慧…様の、お言葉が…とても嬉しい……、」  嗚咽で言葉が途切れ途切れになりながらお話した。    だって本当に嬉しかったのだ。このまま希望もなく、生きていくだけだと思っていたのに、欲しかったもの、欲していたものを聡慧様は与えて下さる。   「自分は……人身御供物として…ここに、来れたことは……っ幸福です。」      聡慧様は自分の言葉を最後まで聞いてくれた。 「そのように感謝されるとは……。余は幸せじゃ。」  その言葉にまた涙が溢れた。    自分の涙が落ち着くまで、聡慧様は抱きしめて背中を撫でてくれた。落ち着くと、徐々に身体が熱くなっていくのがわかった。  時々首や耳に爪が当たり、ぞくぞくと電流が走るように感じる。   「聡慧様…。あ、あの、身体が……熱くなってきました。」 「媚薬の効果がで始めたか。」  息が上がってきて、ふぅふぅと息を吐き出す。 「圭よ。お主の顔が赤く染められ、瞳は潤み、とても愛らしい。」  接吻をされながら、長襦袢をゆっくりと解される。長襦袢に袖だけを通してる状態で胸や恥部が露わになる。自分の男根はふるふると小さく震えながらもしっかりと上を向き、雫が滴り落ちている。 「圭の竿から涎が出ておるな。」  聡慧様から指摘されると恥ずかしい。手で隠そうととするが静止させられる。  聡慧様の耳が下の方に降りてくる。ピンと立っており、時折ぴくぴくと動く。お顔が見えなくなり、どうしたのかと思っていると、亀頭をじゅるっと舐められた。 「あっ!あぁっ」  甘い刺激に嬌声がでる。亀頭から陰茎、陰嚢までも長い舌で愛でられる。 「あぁ、そ、聡慧…様ぁ…っ、ぅん……っ」  男根をなめられながら、胸の小粒を肉球で押されるように揉まれる。時折、爪で引っ掻かれると痺れるように身体を震わせた。 「んぁあ…っ、あっあっ。…はっ…ぁ!」  二箇所同時に愛撫を受けると声が抑えきれなくなった。胸も舐められ、舐められた処はさら感覚が過敏になり、ムズムズして、もっと触ってほしくてたまらない。   「腰を擦り付けて…。可愛いやつめ。もっと欲しいか?」  無意識に聡慧様へ腰を降っていた。 「あっ……これはっ…!」 「素直になれ。言うのだ。」       「……っ。気持ちいいです…。も、もっと……っしてほしい。」 「よく言えた。嬉しいぞ。」  自分の気持ちを言うだけで、聡慧様が喜んで下さる。嬉しい。気持ちがいい。    聡慧様は自分の身体を押し倒し、両足を持つと、硬く閉じている後肛に舌を這わせ、蕾の中に入る。 「そ、聡慧様!」  まさかそこを舐められるとは思わず、大腿で聡慧様のお顔を挟み、これ以上動けなくした。 「…どうした圭よ。」  舌を離し、目線だけ自分の方を向かれる。  「そ、そこは、…不衛生です。舐めるのはおやめくださいっ…」 「舐めて解さないと、余を受け入れるのは難しいぞ。ここに余の竿を入れるのだから。爪は長いのでな、圭を傷つけてしまう。」    「聡慧様のを入れる…」  まぐわうには必要なことなのだろう。確かに着物越しにいきり立つ男根はとても大きい。 「…聡慧様がよろしければ…してくださいませ。」 「大丈夫だ。圭も気持ちよくなる。余に委ねよ。」           「あああっ、だ、ダメぇ…っ!な、なっ…お、奥が!奥が…っ痒いぃぃ!」    どれくらい後肛を解されただろう。硬く閉じていた場所は今やはくはくと物欲しそうに口を開き、てらてらと潤んでいる。前立腺と呼ばれる場所を重点的に責められ、中も柔らかくなると奥の方まで舌で愛撫された。  唾液の効果か中が痒くなり、舌で擦ってもらっても足りなくなってきた。   「そろそろよいか?」  聡慧様は着物を脱ぎ捨て、自分を四つん這いにさせると後肛にいきり立った男根を擦り付ける。   「圭…入れてもよいか?」 「あっ、あっ、入れて下さい…っ」      ぐっ、と男根が中に入ってくる。 「ん、んあぁああ……っ」  想像を超える圧迫感に息が止まる。熱い。大きい。痒い。気持ちいい。  直腸の突き当たりまで到達し、お腹がさらに苦しくなる。中から抉られているようだ。  中がまだ痒い。聡慧様の男根で早く擦ってほしい。 「中を擦って…っ擦って下さいぃぃ」 「…根元まで入ってはおらぬが…、まずは圭を気持ちよくしてあげようか。」  ゆっくりと抜き差しが始まる。動きと共に、くぷっ、ぐぽぉと粘着質の音と自分の嬌声が響く。 「ああっ、あ、ん、いい…気持ちぃ!あっ……っん」  痒みが快感に変わり、布団のシーツをぐっと掴みながら快感に酔いしれた。 「圭の中は、とても気持ちが良いな。」  徐々に腰の動きが早くなる。  (気持ちよすぎて…すごい…っ)     「中も柔らかく解けてきたな…。奥へいくぞ。」 「あっあっ、え…っ?んんっ、奥……って…」  直腸の突き当たりに聡慧様の男根が触れたかと思うと、ずんっとさらに奥の結腸へ侵入してきた。 「あぁぁあああっ!」  目の前がチカチカと光が飛ぶ。先程の比ではない存在感に慄く。口からだらだらと涎が垂れ、犬のようにはっはっと呼吸が乱れた。 「ふっ…そんなに気持ちが良かったのか。吐精しておるぞ。」 「えっ……」  顔を下げ、自分の男根を覗き込むと、とろりと白濁が垂れていた。  刺激が強すぎて吐精した感覚がわからなかった。   「…っ、圭の中が唸り、余の竿を搾り取るように絡んでくるの。すまぬが我慢できぬ。許せ。」 「えっ…。あっあ、ああ!まっ…てぇ…っ!」    出してすぐの身体には強すぎる快感についていけない。男根が直腸と結腸を激しく行き交う度に、少しずつ自分の鈴口から雫がこぼれる。 「そ、聡慧ぇ…様ぁあ!は、あぁ!激し……っ、いいぁっ」      脳味噌が蕩けたように何も考えられない。  自分は迫り来るう快感をただただ受け止め、鳴き続けた。    ふと目が覚めた。目の前にふわふわとした獣毛が広がっている。毛布に包まれているみたいだ。顔の上げると聡慧様のお口が見えた。   「起きたのか。」   聡慧様は起きておられたようだ。自分が顔を上げたので気づいてくれたのだろう。覗きこむように目線を合わせて下さる。 「すみません…。途中から記憶が途切れ途切れで…。寝てしまったのですね。」  「良いのだ。余が我慢がきかず無理をさせてしまった。圭は悪くない。」 「はい……。」   まぐわった事を思い出し、自分がはしたない言葉を言っていたことに恥ずかしさが込み上げる。  聡慧様はふっと笑い、抱きしめて下さった。 「とても可愛かったぞ。圭となまぐわいは至極じゃった。」  聡慧様は自分が嬉しくなる言葉ばかり下さる。とても温かい。  「嬉しいです…。自分もとても…気持ちが良くて、満たされた気分です。」 「ははっ、それは嬉しいの。」  聡慧様の大きな手で頭を撫でられる。気持ちよくて、目を瞑りぎゅっと聡慧様を抱きしめ返す。    お互い言葉を交わさなくなったが、沈黙による息苦しさは全くなく、時間が流れる。      「圭よ。」  聡慧様がぽつりと自分の名を呼ぶ。心地よく、再び微睡みに入りそうだった意識が浮上した。 「はい、聡慧様。」 「少し昔話を、をしてもよいか?」  金色の瞳が硝子玉のように光を映し出す。キラキラとして美しい。目線を熱く感じる。 「はい、お聞かせください。」     聡慧様はゆっくりと話し始めた。 「余は元々狼だ。順列は下の方で、狩をして貢献しておった。その日も狩をしており、偶然鹿に襲われていた老婆を見かけた。  その鹿は手負いで、気が立っていた。だから人を襲ったのだろう。余からすれば恰好の獲物で、鹿を仕留めた。久しぶりの大物で老婆のことは見向きもしなかった。  余の行動を老婆は襲われているところを助けてくれたと勘違いをした。そして時期良く、長く続いていた干ばつが改善した。人々は余を山神と崇め、余が死んだ後も信仰を続けた。余の身体はなくなったが信仰の強さは変わらず、本物の山神となったのだ。」    「そうだったのですね。」  聡慧様は一息つくと、自分の顔色を伺う。その瞳は先程の熱はなりを潜め、不安そうに揺らぐ。   「余は山神と祀られるほどのことはしていない。群の長にもなれぬ、弱い狼だ。神となれたのも偶然が重なっただけなのだ。」  ご自分のお話をされている今は息苦しさが滲み出て悲しい。 「偶然だとしてもその老婆は聡慧様が狩をしたからこそ助かったのです。そして、今まで山や村をお守り下さったではありませんか。」   書物でしかみたことはないが、昔起きた天災も山神様への祈りにより、治ったのだ。   「余の力ではない。人の信仰心が余に力を与えておるだけだ。天災を遠ざける力も、余に捧げ物をしたという人の信仰心が高まり、その力を使って治めておるだけだ。」    その力があることがとても凄い事であるのに、聡慧様はご自身の力だと思う事が出来ないのだろうか。 「しかし….祈りだけでは変えれない世の中を聡慧様は変えて下さっていた。とてもすごいことです。…聡慧様はご自身を卑下されておられますが、自分は、聡慧様が山神様と祀られていたからこそお会いすることができました。偶然でも…私にはとても嬉しいことです。」  聡慧様の手に力が篭り、強く抱きしめられる。 「圭……。お主は余を喜ばせるのがとても上手いの。」 「それは……そのまま聡慧様に返させていただきます。」  自分もぎゅっと抱きしめ返し、どくどくと鳴る鼓動に耳を傾けた。     「では本題だ。」  「本題…?」  抱きしめていた身体を少し離し、目と目を合わせる。    「圭が供物としてここに来た事で村人達の信仰は高まり、余に力が出来た。これで天災を遠ざける事が出来るであろう。そなたの役目は終わったのだ。」 「そうなのですか……」  自分の役目は終わってしまった。聡慧様と触れ合うことで溜まった幸せな気持ちが萎んでいく。   「圭が良ければ村にも帰れる。天災が良くなった後に帰れば今までのように辛いことはあるはまい。」  村に帰る……。自分を必要としないあの村に……?   「…自分は……村には帰りたくありません。」  身寄りもない。 今更村で歓迎をされても、村の人の好意を自分は素直に受け取ることは出来るとは思わなかった。 「そうか。」 「はい。」  自分ははっきりとした声で返事をした。 「……村を出て、町の方に行くことも出来るぞ。」  町に行けるのか。甘い物や様々な物に溢れ、活気のある町に。確かに行ってはみたい…。でも自分は……。   「聡慧様のお側にいることは出来ないのでしょうか…?」  自分は聡慧様のお側にいたい。与えてくれた優しさや温かさ、そして……あの激しいまでの熱をまた感じたかった。   「…余の側におるということは、先程のようなまぐわいを行うぞ。」  直接的な言葉で言われ、返事をするのが恥ずかしくなる。でも素直になってよいと言われたのだ。自分はそう言ってくださった聡慧様にしっかりと気持ちを伝えたい。   「聡慧様と会い、お時間はあまり経っておりませんが、お言葉や行動に何度も心が温かくなりました。生きる気力すらも見出せていなかった自分が生きたい…聡慧様と添い遂げたいと思ったのです。  自分は聡慧様のことをお慕い申し上げております。あ、愛しております。あの……ま、まぐわいもこれから、何度もして欲しいのです…っ。」    数秒の沈黙が流れる。自分はいけない事を言ってしまったのか不安が膨らむ。 どのようなお顔をされて聞かれていたか俯いていて、見ていなかった。 目線を上げると、聡慧様の力強い瞳と打ち合う。 「では余と番になるということであるな。」     手に力が篭った。  番……。自分と聡慧様が夫婦に……。   「はい…。是非ともよろしくお願いします…っ。」  ぎゅうと聡慧様を抱きしめ、肩に顔を埋めた。 お側にいることが出来るのだ。 感極まり、涙がぽろぽろと出てきた。 「余は番は初めてだ。求愛は難しいものだな…。拒否をされたらどうしようかとひやひやしたが、心が通うと嬉しいものだ。」  愛しみのある瞳を向け、軽く唇を啄ばまれる。  求愛……?自分はいつ求愛をされたのだろうか? 「聡慧様は自分を好いて下さっているのですか?」 「ん?好いておるから番になったのだろう?」 「そ、そうですか。言葉で好きと言われなかったので気づきませんでした。」  まぐわっていたときに愛らしいや可愛いと言われたが、しっかりと好きとは言われていない。犬や猫のように、愛でてくれていると思っていた。 「…先程まで言っておったではないか。」  不思議そうに首を捻る。 「えっ……」  まぐわっていたときではなく、先程言っていただろうか?自分の気持ちを確認されただけのように思ったのだが…。 「余の気持ちは番になりたいと決まっておった。だから圭の気持ちを聞いたのだぞ。」        「それは………求愛とは言いません。」 「……む」 「自分を好いていると言葉に出して頂かないと求愛とは言えません。先程の会話は自分への確認事項です…。」 「……そうか。」 「そうです…。」  「……圭よ。少しの間に強くなったの?」    あ……山神様に向かって軽口を叩いてしまった。 「す、すみませ……っ」 「いやいや、責めておるのではない。嬉しいぞ。」     このように安心させてくれる言葉をくれるので言えるのだ。自分を傷つけないという確信があるから。     家族がいたときは遠慮なく、口に出していた。それを思い出す。  自分はすでに無意識のうちに聡慧様に甘えていた。 「言葉として伝えてよいと思い出させてくれたのは、聡慧様のおかげです。なので…聡慧様のお気持ちを言葉として聞きたい。」     聡慧様は虚をつかれたようなお顔の後、くっくっと目を細めて笑われる。そのお顔を見ると自分もとても嬉しくなる。 「そうだな…。きちんと言葉にしようか。」 鼻を擦り付けるように顔に触れる。 「余に何人か供物としてきたが、愛らしい、愛おしい、番にしたいと思ったのは圭だけだ。…愛している。」 優しく口づけをされ、胸の中は水が溢れるように喜びが満ちていく。 「聡慧様……私も愛しております。」  圭、享年74(満73歳)。 春先に、天へと旅立った。 その年には季節外れのケイソウの花が聡慧山に咲き乱れ、長く山を彩った。 ケイソウ花言葉 『色褪せぬ恋』                                                  END.
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