第11話 小百合

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第11話 小百合

「やあ」 お昼休みもギリギリになって、移動中の廊下で、野崎さんその人と、大宮くんが前を歩いてきた。   今日は、お昼休憩、外だったのだろう。「出先でそのまま昼食。ね、野崎さん」大宮くんがそう言って、野崎さんが頷く。   「なんだか久しぶりな気がします」 全然そんな事もないのに、つい口を突いてしまって、大宮くんが野崎さんからは見えないのをいいことに、にやにやするので、私は顔が熱くなってしまった。   「ああ、そうだ、香坂さん飲むヨーグルト好き?」 「え、はい」 「じゃあ、あげる。飲んで」 そう言って、ストローのついた乳酸菌飲料を手渡された。   「この人、牛乳と間違えてこれ買ったんだってさ」 「色が同じだからだろ」 「あ、でも美味しいですよ」飲んだことあるけれど、美味しかった。 「うん、でもコーヒーに入れるつもりで買ったからさ」 「俺は腹弱いから、貰えないし、香坂さん貰っちゃえば」大宮くんがそう言ってくれて、受けとった。野崎さんは少し微笑んで、そのまま二人は歩いて行った。   「つか、野崎さんコーヒーブラックっしょ」 「イライラにはカルシウムかなと思ったんだよ」 「全然イライラしてないじゃないですか」 「え、ぷんぷんしてるよ、俺」 「……ぷんぷんてなんすか」   大宮くんが振り向き、私に、先に行く野崎さんの背中を指差して 「可愛いだろ?」と、口パクで言った。 私はコクンと頷いた。ぷんぷん、してるんだ……忙しいのかな。  
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